Office Matching Mole on the Web/週刊モグラ屋通信 8



 週刊 モグラ屋通信 第19号 2000.4/7  


内藤です。リハビリのかいもなくまた2日遅れのモグラ屋通信の更新ですが、それにしても春ですねぇ……。オフィス マッチング・モウルのある愛知県岡崎市では、桜はまだ3分咲きといったところでしょうか。見頃は来週ですね。あなたの街ではどんなでしょう? などと和みつつ、今週は池田と濃いミーティングを重ねておりました。春になって、いきなり活気づく池田。私は目を丸くして頼もしくぼーっとしている場合ではないので、いっしょになって活気づくことにしました。よーし、がんばるぞ。今週のミーティングでは、ちょっと遅くなりましたが2000年度のモグラ屋の所信表明演説をばぶちかましあったというか、やっとまぁ、我々モグラ屋のアート・コーディネートというかプランニングというかマネージメントというか、なんとでも好きにお呼びくださいというその仕事における 理想から現実へ架ける橋 をおぼろげながら言語化した、とでも申しましょうか。けっこうおちゃめな私たちです。そんなあれこれを4月中に発行するペーパー版モグラ屋通信 Vol.2 にてお知らせできると思います。この紙版モグ通は、オフィス マッチング・モウルにおけるメディア・ミックスというか、ようするに、インターネットに繋がっていない老若男女の方々にお届けするウェブ版より少し固めの活動報告書です。内容としては、かなりウェブ版とだぶっているのでここをお読みの方には「もう、聞いたってば、その話は」状態なのですが、あえて紙版も欲しいぞという方々にも今後はお届けすることを考えています。詳細は追ってお知らせいたします。っていうか、まだ考えてないんです詳細。しばしお待ちを。


今週のモグラ屋のアートなおでかけは、4月6日の 愛知県美術館 における 『レンブラント、フェルメールとその時代 アムステルダム国立美術館所蔵 17世紀オランダ美術』 展 (6月18日まで) のオープニング・レセプション。ご存知の方も多いと思いますが、現存するフェルメールの作品は世界に36点。私はニューヨークのメトロポリタンで2点見ているので、今回ので既に12分の1を見てしまったことになる。ということは? フェルメールは1点しか出品されておりませんでしたー。が、レンブラントはタブロー2点とエッチングが数点。やっぱりよかったです、レンブラント。他にも良い作品がけっこうありました。17世紀オランダ絵画って、超メジャーな作家しか知らない私でしたが、こういうのって見ておかなきゃあと痛感。いやもう、絵が上手いってのはどういうことかってことをしみじみ思い知らせてくださいまして、なおかつ上手いということの限界というか、さらにそれを突き抜けていくちからというものも同時に痛感することもできる、こんな展覧会はやっぱりいいです。


富める者みな惜しみなく金を使うべし、と思っている私は、懐は寒くても心はいつも富める者であるからして、どんな展覧会でも「もし、私がここにある作品を買うとしたらどれだ?」と自問自答します。ま、普通は画廊の展覧会でそのような脳内押し問答をするわけですが、なぜか今回は美術館の展覧会でおのれに問いかけてしまいましたよ。それはそうとうに虚しい行為でもあるわけですが、結論としてそのココロは「くれると言っても (天地がひっくり返っても誰もくれないが) この素晴らしいレンブラントのタブローはいらない!」というものでした。いやー、やっぱり例え王侯貴族といえども、個人が所有するものじゃないです。世界に、美術館というものがあって本当に良かったです。ええ、私にはヤン・ダフィツゾーン・ド・ヘームの『本のある静物』か、レンブラントのエッチングの小品『テーブルの傍らに座るレンブラントの母』をください。言うのはタダだ。


目的の企画展を見てしまった後、おなじみのコレクション展示を見てまわり。常設とコレクション展示の一角に、比較的現代美術を中心としたプチ企画展がよく開催されているのですが、そこで思いがけずに (単に知らなかっただけ。でも、来てた人達もやっぱり知らない人が多かった) 河原温 浴室シリーズ』の展示に遭遇! これはラッキー。かなりまとまった数で30点近くあったんじゃないだろうか。これまで数点しかみたことなかったので大満足。レンブラント&フェルメールもいいですが、たしか東京国立近代美術館所蔵のこの河原温の1953〜54年にかけての伝説的な作品群を見逃す手はありませんでしょう。是非、みてね。


展覧会も見終わり、やっぱり集中してある程度の数を見ると一時的に心身ともに虚脱状態になります。その後、見る前にも増してしずかにしずかに内側からエナジーが湧き上がってくるのですけどね、いい作品に出会えると。しかし、まだ虚脱状態だった私と池田は、美術館前の大きなベンチに腰掛けたまま、目の前のレストランで行なわれているパーティーにも出ず、ひたすらに今見た作品の余韻にひたっておりました。そこへ現れたのが大阪の 加藤義夫芸術計画室 の加藤さん。仕事のついでではなくて、やっぱりわざわざ展覧会のために足を運んだそうで「古いものだっていいものは見てるよ」ってとってもプロなのでした。その後、加藤義夫芸術計画室とオフィス マッチング・モウルによる壮絶な開き直り大会 (開き直っているのは主にモグラ屋) が繰り広げられたのは言うまでもない。ええい、不肖私たちも先人に習って日本現代美術界の人柱というか、踏み石というか、そういうものにはあんまりなりたくはないが、なるならなるさ。あは、あは、あはは。


さて、来週11日の火曜日から、いよいよ 2000 名古屋コンテンポラリーアートフェアー がスタートします。多数のお運びをお待ち申しております。オフィス マッチング・モウル一同、初日には会場に出没する予定です。会場で見かけた方は、どうぞひとこと声をかけてくださいまし。


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 週刊 モグラ屋通信 第20号 2000.4/21  


内藤です。更新をさぼっているあいだに、 2000 名古屋コンテンポラリーアートフェアー (通称 NCAF) も無事終了。今年で13回目を迎えました。11日のオープニングには、池田とふたりででかけてきました。全国から24の画廊が参加。地元名古屋はもちろん、東京、大阪の他に札幌から2つ、香川、群馬、金沢、岐阜、福島からの参加もあり、初日ということもあってアーティスト、画廊のスタッフ、コレクター、美術館関係者や若い学生たちなどもつめかけてたいへんな賑わいでした。私も池田も画廊のアシスタント時代にスタッフとして参加していたので、参加画廊や関係者の方々はよく存じ上げている人も多く、楽しい再会。


名古屋コンテンポラリーアートフェアーというのは、名古屋という土地柄のせいか、いろいろな意味でアットホームで民主的なのが特徴でしょうか。業界における画廊の知名度および経済力や参加回数などで、アートフェアー内の発言力が変わることはあまりない、というか…… (ようは政治的でない、ということか?) 。参加画廊数がそれほど多くないので、みんな平等に意見を述べられるというか。というわけで、毎年、まったりと過ぎてゆくのでした。こういう「まったりさ加減」を普通は打開しようとしたり、まったりにうんざりして止めてしまったりするのでしょうが、この「まったりのまま末永く」というのも、ひとつの名古屋的なものかもしれない。以前は、なんだかそんな状態に疑問を感じたりもした私ですが、年のせいでしょうか、なんかこの「続けて行くこと」ってのも、思ったより大切なことなんじゃないかと、近頃は感じています。なんといっても13年も毎年続いているわけですし。


今年は北海道から2画廊が参加。それにともなって、スタッフや作家なども遠く離れたこの名古屋へやってきました。私は、15日に開催された打ち上げというか懇親会にも出席いたしましたが (オフィス マッチング・モウルは今回のカタログ編集のサポートをさせていただきました) 、その時、何人かの北海道の若者たちと話をしました。彼らとの話は、なんか気持ち良くてねぇ……。どういうんでしょ、たまたま私が知り合った道産子の方々がそうなのか、気持ち良くストレートな感じが好感度高いんですね。決して押しが強いとかそういうんじゃなくて、あんまり肩に力入ってないんだけどすーっと伝わる感じ。方言とか、ことばの関係なのかしら? 彼らと、来年も名古屋で会えるといいし、札幌だけでなく、他の都市でも発表の機会や活動のチャンスが増えるといいね、とホンネで思いました。


話は前後しますが、14日には作家の 海老塚耕一さん が、モグラ屋のある岡崎を訪れてくださいました。今年の2月に、本当に偶然、東京は銀座での画廊巡りの時にお会いして以来です。でも、その後、メールのやりとりはございまして、いろいろ、モグラ屋を励ましてくださったり。なにしろ、海老塚さんは池田の多摩美時代のゼミの恩師だったりするもので、つられて私も生徒モードになりそうに……。ま、しかし、それでも池田と私はふたり併せて (なぜ、併せるかなぁ?) 20年近くも美術の世界で細々とではありますが、生きてきたわけであり、いつまでも教えを乞うばかりではいけません。というわけで、今はいっしょにお仕事ができるように、池田とふたりであーでもない、こーでもないとミーティングの日々です。


いつも、思うのですが、私が一番エナジーをもらえるのは、やっぱりアーティストですね。それも、作品を作っているアーティスト。さらに、たぶん、これからも、作品を作りつづけるだろうと確信させてくれるアーティストです。私を一番脱力させるのは、ことばだけの人。この辺り、異論のある方もございますでしょうが、私は出身画廊からして体育系なんでねぇ。動かない人、駄目なんですよ。1ミリずつでもいいから、喋ってる暇あったら動けよ、みたいな。これは、もちろん、自戒を込めて。というわけで、1ミリでも動くべく、明日 (あ、もう今日になってしまった) は名古屋で打ち合わせに行ってまいります。


あ、いかん、話が脱線したままでした。 海老塚耕一さん の展覧会が5月30日まで、 プラザ・ギャラリー で開催中です。この展覧会に関しては、詩人で映像作家の 鈴木志郎康さん のウェブサイトの中にある 曲腰徒歩新聞の4月13日 に詳しいのでぜひ、お読みください。ふだん、美術方言でばかり話しているのは私も同じで、この展覧会の感想を読んだ時、とても新鮮で気持ちよく感じるのは私だけでしょうか? 名古屋のアートフェアーの会期中は、特に美術方言の訛りのキツイ方と話す機会が少なくないわけですが、私の目指すところは、美術方言を捨てることだし、方言にくっついているいろいろなものをなるべく捨てて、身軽にホントに必要なものだけを抱えてミリ単位で前進することなんで、方言を守る会の方は、私をそっとしておいてくれぃ!


あ、なんかもう、話があっちゃこっちゃで収集がつかなくなりました。もうわらわらついでに思いついたことを書いてしまいましょうか。


前回のモグ通で「もし、この中で購入するとしたらどの作品だろう?」と、私がたいていの展覧会で行なう妄想について書きましたが、買う、買わない (私の場合は買える、買えない、とも言いますが) は別として、とりあえず作品のお値段を画廊のスタッフに聞いてみるというのはひとつの手ではありましょう。なんでこんなことを書いているかというと、実は先日白土舎でオノサトトシノブの素晴らしい初期の水彩作品を見た後、念のため、ディレクターの土崎さんに作品の価格を尋ねてみたのです。ついでに、難波田龍起のドローイングの価格も……。そうしましたら、オノサト作品は私の推定の1.5倍 (その時期の水彩作品の点数がとても少ないということを私が知らなかったため) くらいでしたが、逆に難波田作品は私の推定価格の3分の1くらいでした。ひゃ〜、がんばれば買えるじゃない (ちなみに、30代後半でまともにお勤めしている人なら、あんまりがんばらなくても買えるでしょう) ! よーし、オフィス マッチング・モウルでばりばり働いて、是非、買おうではありませんか! 10年後くらいに……。な、情けないっ。


ふぅ。ぜんぜん、人に読んでもらうという書き方じゃないな。とほほ。だいたい、週刊で書こうと思うから、あとでまとめてその週のことを思い出そうとして取り返しがつかなくなるんですね。これからは、あまり水曜日更新にとらわれることなく、ラク〜に、思い立ったが吉日、という感じで書くことにいたします。See you ソノウチニ。



     
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