Office Matching Mole on the Web/週刊モグラ屋通信 12



 週刊 モグラ屋通信 第28号 2001.1/23  


第八番 大吉 雲はれて朝日の昇るが如し

此のおみくじの人は、朝日の昇るが如く、闇より明に出て、苦より楽に移るすがたありて、
運勢大いによろしく、諸事都合よく運ぶべし。
是れ神明の守護なれば、其の恩を、忘れざる様、注意すべし。


忘れませんとも! というわけで、2001年元旦。三河湾にうかぶ竹島八百富神社へ初日の出&初詣に出かけ、引いたおみくじが上記のものだった内藤です。「闇より明に出て、苦より楽に移るすがたありて」ってところで、ぶっ飛ばされそうな強風の中、子供の頃から親しんだ三河湾と、そこに輝く2001年最初の太陽に向かって「よっしゃー!」と叫んだのは言うまでもございません。「運気 大いによろし (わーい) 、願望 思うままにととのふべし (どきどきどき) 、待ち人 早く来る (もう来たかも。1月22日現在) 、旅行 さはりなし (ほいきた。呼ばれればどこへでも行きます行きます) 、売買 買ふに利あり (ふーむ) 、争事 必ず利あり (……) 、失せ物 低き処より出づべし (心得た!) 」というわけで、おみくじ上ではなかなか素晴らしい予言がなされているのでございました。もちろん、昨年以上に今年は仕事に邁進いたしますわ。


1月2日。新春恒例の感のある池田家へのお年始。池田のご両親に「今年もどうぞよろしくお願いします」とご挨拶。熊本出身のお父上さまより、高級馬刺をふるまわれる。ものすごい美味しいでかんわ。さらに日常生活では滅多に食すことのかなわない蟹もたらふくご馳走になりました。お酒もいっぱいいただきました。感謝感激。今年こそ、それぞれの親の心配 (「まったくこの娘たちはちゃんと商売をやっていけるのだろうか? 頭が痛い、胃が痛い」) を減少させることを心ひそかに誓うモグラ屋二人組でした。


さて、今回 ニュースのコーナー でもお知らせしましたが、事務所として佳境に入っているのが、地元岡崎市の美術博物館で2月10日から3月11日まで開催される 『ジャズの街角 PartV−内田修ジャズコレクション−/アメリカンファッション 1940’s−1960’s』 の展覧会カタログ制作の仕事です。ジャズに詳しい方や、地元の方にはよく知られているのですが、岡崎市で長く病院を開業されていた内田修先生は平成5年に1万2千枚を越える膨大なレコードをはじめ、テープ、書籍、オーディオ器材などを含む世界有数のジャズ・コレクションを岡崎市に寄贈されました。今回はそのコレクションによる第三回目の展覧会で、60年代からの新しいジャズの流れを担うこととなるビッグレーベル「インパルス」、そしてアメリカを代表するレーベルでありジャズレーベルとしても名高い「アトランティック」のオリジナル盤を中心に総数約450点が紹介されるという内容です。さらに、今回はさらに、ジャズがアメリカで大きく変貌していった1940年代から1960年代のアメリカの女性のファッションを取り上げたアメリカンファッションの展覧会も同時に開催されます。ジャズとファッション、及び古きよき時代のアメリカに関心のある方は是非お運びくださいませ。詳細は美術博物館の催事案内をご覧いただくとして、会期中は専門家による解説付きのテープコンサート、レコードコンサートを始め、会期中の日曜ごとにジャズのコンサートも開催されます。オフィス マッチング・モウルはその展覧会カタログの編集に当たり、最後の追い込みに入っております。仕事中も気分を盛り上げるため、ジャズのCDをかけたりなんかして、、深夜までふたりで事務所でよれよれになって仕事をいます。


ほぼ同時期の開催予定ですが、もうひとつオフィス マッチング・モウルとして関わっているのが、 世界劇場会議 国際フォーラム2001 という劇場関係のフォーラムです。こちらも詳細は上記のウェブサイトをご覧いただければ幸いです。モグラ屋としては、内藤が担当しているのが、このフォーラムのプレイベント バトルセッション 劇場はリングだ! なのだ。実はこちらの企画書は、ワタクシ内藤が作ったもので、「劇場はリングだ!」などという煽り気味のコピーも私が書きました (このまま通っちゃうなんて正直思わなかった) 。演劇関連の企画に携わるのは始めてのことで、美術とはまた別の常識や価値観との出会いもあって興味深い経験です。このプレイベントのサイトも開催までにもう少し充実させる予定ですから、ちょくちょく覗いてみてくださいませ。開催は2月8日(木)午後6時30から。愛知芸術文化センター内愛知県芸術劇場小ホールにて。入場料1000円です。みなさまのお越しを心よりお待ちしています。


他にも報告したいことがらはいろいろあれど、それはまた次回に。まだまだ同時進行で複数の締め切りに追われる修羅場のオフィス マッチング・モウルの今日この頃でした。


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 週刊 モグラ屋通信 第29号 2001.1/29  


内藤です。前回のモグラ屋通信で書こうと思っていたこと、さらに、さっさと書いておかないと、またぞろ忙しさに追われて機を逸してしまいそうなことなどを書いておくことにします。1月20日、ものすごく久しぶりの東京出張。もろもろ、仕事に追われて打ち合わせが充分でなかったので、出張先に同行してくださった業務依頼者M氏と新幹線の中で打ち合わせ。別件の仕事で先に東京入りしていた池田と合流して3人で目的地へ向かいました。まだまだ計画中の仕事なので詳細は書けませんが、M氏とともに、とある美術関係者のご自宅に伺いました。その方は、池田と私がお互いに美術の仕事を始めてからずっと10数年来、その硬派な企画を密かに尊敬申し上げていた方なので、数時間に渡っていろいろなお話をご本人から直接お伺いすることができ、とてもエキサイティングなひとときでした。素晴らしい作品もいろいろ見せていただきました。化粧室の中にもちょっとすごい作品がありました。至福でした。


時の経つのを忘れて傾聴すること数時間、気がつけばいつの間にか雪が降っているではありませんか。室内からお庭を眺めると、黒御影の石彫の上に雪ふりつむ……。と、雪の美しさに浸ってばかりもいられない。なぜなら内藤は日帰りで出張を予定していたのだから。打ち合わせの間切っておいた携帯電話には、家人から「岡崎はすごい雪だから駅まで車で迎えに行くのは無理かも。それ以前に電車は動いているのか?」という不吉なメッセージが……。経費節減のために日帰りを強行すべく、東京駅までとって返して発車直前の新幹線に飛び乗りました。しかし、横浜あたりからは雪は雨に変わり、新幹線のもより駅である豊橋も雨で、積雪の片鱗も見受けられない。安心して名鉄東岡崎で下車すると、そこは信じられないような雪国でした。どーなってるんだ ?! しかし、なんとか家にたどり着き、街を見下ろす高台の自宅の窓から、屋根に雪が積もっているせいで、青白くあかるい夜の風景を眺めながら、そのあわただしい一日の中で心に残ったたくさんのことばを思い返しておりました。私があと20年も30年も経って、その日お会いした美術関係者のように、変わらない、しかも惰性でもない、アートに対する愛情をあんなに深く持ちつづけられるだろうか? と。それから思うのです。たぶん、できるはずだと。そのためにやらなくてはいけないこと、忘れてはいけないことはたくさんあるのだ、とも。


1月24日。夕方まで事務所でデスクワークに没頭。その間、池田は浜松にある印刷会社へもろもろ打ち合わせに。5時くらいの電車に乗って私は名古屋へ向かう。実は前日、名古屋市内にある 白土舎 設楽知昭展 のオープニングがあったのですが、当日締め切りの仕事が2件あったので行けなかったのでした。久しぶりの白土舎。画廊の空間というのは、おおむね「白」なのだけれど、白土舎はそのどこよりも「白い空間」だといつも感じます。オープニングもいいけれど、やっぱり作品を見るのは静かな方がいいですね。画廊に足を踏み入れると、まっさきに感じるのは絵の具のにおいでした。正確にはペインティング・オイルのにおいかもしれないですが……。この絵の具のにおいっていうのは、なんともしびれるものです。今回の展覧会作品は、設楽さんの作品にしては珍しいペインティング作品ばかり。ペインティングと書くよりも「絵画」と呼んだ方がいいんでしょう、作品は全部具象だし。


作品に関して思うところはたくさんあるのですが、なによりも、久しぶりに「作品買おうかな?」と心がぐらぐらしたということをまずは報告いたしましょう。「買いたい」というの思いには、これまたいろいろな要素が含まれているのですが、一番はやはり「この作品を傍に置いておきたい」こと。「この作品のある空間で生活 (あるいは仕事) したい」ということ。それは、自分の人生の中をその作品と共に過ごしたいという不思議な欲求です。もちろん、そう思って購入した作品の半分以上は、「もうあなたとはお別れしたいの……」という悲しい結末を迎えたりするのだけど、その比率はだんだん減っているような気がします。あら、なんだかこの感覚は恋愛と似ているわね。それで設楽知昭の作品というのは、異性にたとえると激烈な一目ぼれとは違う。それはとても静かな出会いであり、しかし、その余韻は心地よく、もう一度会えることを運命のように感じる、そんな印象があるのでした。わかるかね? ま、おこちゃま (比喩) にはわかんないかもね。ふっ。


同日夜、池田と合流して名古屋大学へ。3月31日、4月1日と名古屋港ガーデン埠頭界隈で開催されるアート・イベントの世話役をしている名古屋大学大学院人間情報学研究科助教授の茂登山さんの召集によるミーティング。プロジェクト名称は 『@port (アット・ポート)』 。名古屋港の空き倉庫を利用したアート・スペースづくりを展開している 『art port』 とはまた別のプロジェクトですからね、関係者も錯綜していますし、連動性がないわけではありませんが、一応お間違いのないように。しかし、その 『art port』 自体は昨年5ヶ月でのべ28000人を動員したと聞きますから、企画もさることながら名古屋港のあの倉庫群のエリアというのは、確かに人々を惹きつける魅力があるようです。


で、今回私たちが事務局としてサポートすることになった『@port』 は名古屋市役所、港区役所、商店街などのコラボレーションによるまちづくりやまちの活性化事業の一環として開催されます。今回の企画は若手アーティストや学生など20代を中心にした若者たち (除く茂登山先生) によって行われます。オフィス マッチング・モウルのおばさんたちの仕事は上記にもございます通り事務局です。はい。2月には若者たちがウェブサイトも制作する予定なので、できたらこちらでも告知いたします。空洞化した中心市街地や都市からの遠隔地などで「自分たちの住む地域を活性化させよう、そのためにアートはどうだ?」というのが、何年も前から各地で検討されています。これは社会の中の課題でもあるし、オフィス マッチング・モウル自身の課題でもあります。一朝一夕にはいきません。この問題についてはアート・マネジメントの観点から、さらなる考察が必要でしょう。とまれ、私たちはプロフェッショナルとして、『@port』 でより多くの人たちがアートやアーティストとの出会いができるように、お仕事お仕事。


@port』 のミーティング終了後、午後10時をまわっても、働き者の池田と私はさらなる打ち合わせに。できてきたばかりの岡崎市美術博物館の展覧会カタログ色校を持って、表紙などメインのページを担当したデザイナーの事務所 (名古屋市内) で色校のチェック。いい仕事をしてくれて、さらにこんな非常識な時間に押しかけても文句も言わずに対応してくれるデザイナー森前ヤスシくんに感謝。指示をもらってから、森前くんと偶然そこに来ていたオフィス マッチング・モウルの印刷物の采配を一手に (無理矢理) お任せしているワイズコーポレーションの鈴木さんもいっしょに、夕食も兼ねた本日の打ち上げ@金山駅近くの「幻の居酒屋」という居酒屋。どこが「幻」やねん? 結局自宅に帰り着いたのは午前2時でした。しかし、その後、鈴木さんはさらに別の打ち合わせへ向かうということで、一体どういう時間帯で仕事しているんだ君たちは? と、自分のことを棚にあげて呆れ果てる名古屋の夜。次号につづく。



     
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