三河・佐久島アートプラン21
佐久島体験2001 祭りとアートに出会う島
 
太鼓祭り・リポート
10月6日(土)

「佐久島太鼓を聴く」。
その日、佐久島では何かが変わった


午後1時。太鼓祭りの最初のイベントである、「佐久島太鼓を聴く」は、西公民館で開催された。会場に一歩足を踏み入れると、壁は色鮮やかな大漁旗で埋め尽くされ、見るものを圧倒した。
 
佐久島太鼓は東西ふたつの地区でそれぞれ継承されている。太鼓祭りは、初日を西地区、二日目は東地区で開催することになっていたが、高齢化と過疎化の進んだ西地区で太鼓のイベントをおこなうことに、当初西地区の住民は不安気だった――「太鼓の叩き手が少ない」。この現実的な悩みに、島の活性化のために活動する有志「島を美しくつくる会」が呼びかけ、東地区からたくさんの応援が駆けつけた。
 
太鼓祭りのため、西地区では4日間、8割以上の住人と東地区からの応援を巻き込んだ太鼓の練習がおこなわれた。会場を大漁旗で飾ること、太鼓の練習をすること――、どちらも島民自身によるアイデアから生まれたできごとだ。熱心な練習を経ての太鼓祭り初日。西公民館は、島民の熱意と期待とたくさんの人たちでいっぱいになり、力強い響きは訪れた人に強い印象を残した。4日間の練習がもたらしたものは小さくないようだ。本土で定年まで過ごしたUターン組の島民には、若い頃に太鼓を習う機会がなく、太鼓祭りを契機に初めて佐久島太鼓を打つことができるようになった人が何人もいたという。若者でなくてもできることはたくさんある。何かが、少しずつ変わり始めているのかもしれない。
 
 
音楽ワークショップ1
島の楽団「とにかくやってみよう編」
本当の交流とはなんだろう?

午後1時半、ワークショップ開始。太鼓祭り「島の楽団」は、伝統の佐久島太鼓と楽器を持って集まったワークショップ参加者が、いっしょに演奏し、音楽による交流の輪を目指す。音楽ボランティアであるオーストラリアの民族楽器ディジュリドゥ演奏の若者たちが、リーダーとしてワークショップを引っ張ってくれた。ディジュリドゥは、会場につめかけたほとんどの人たちにとって、初めて出会う楽器だ。デモンストレーションの演奏で、不思議な楽器の不思議な音に、島民やワークショップ参加者は目を見張り、耳を澄ませた。
 
佐久島太鼓と他の楽器の合同演奏は簡単にはいかなかった。とにかく太鼓の音や迫力に、ディジュリドゥやバイオリン、ギターなどのアコースティックな楽器は圧倒されてしまう。なかなか上手くコラボレーションできない「島の楽団」であったが、それでも、ワークショップの最後になると、少しだけ音による会話が始まった。フリーセッションというのは、縄跳びに少し似ている。くるくる回る縄の回転にリズムを合わせ、からだを滑り込ませるにはコツがいる。焦らず耳を澄ませるうちに、初めてコミュニケーションが生まれる。それは、用意された出来合いのものではなく、体験してみて初めて手にする交流だろう。
 
 
「島の楽団・ミニライブ」静かな森の演奏会で
 夜7時。佐久島キャンプ場に宿泊する音楽ボランティアのメンバーたちと、ワークショップ参加者や島民など、総勢50名が静かな森の中に集まり、キャンプ場でのミニライブが始まった。島の祭りで使う横笛を持参する人、自宅から音の出るものを持ち寄る人もいて、昼間のワークショップではとまどいのあったフリーセッションにも、ミニライブではたくさんの人が参加した。同じ日にはじまった弁天サロンでの展覧会のアーティスト、小川信治もフリーセッションに加わり、演奏に掛け声をかける人、歌う人、踊りだす島民もいて、静かな森の中に、音楽と笑い声がこだました。ミニライブは2時間ほど続いた。
 
 
 
10月7日(日)

「佐久島ソーラン」
島の子どもたちのすばらしい歓迎


午後1時半、大浦海水浴場。太鼓祭り2日目は、島民からの提案に応え、佐久島小中学校の生徒20名の「佐久島ソーラン」を皮切りに始まった。前月の運動会で大好評だった「佐久島ソーラン」を、ワークショップの参加者や、太鼓祭りを訪れたたくさんの人たちの前で、子供たちはふたたび元気いっぱいに披露してくれたのだ。雲ひとつない快晴の島の青空に、子供たちの振る美しい大漁旗が鮮やかにひるがえり、見学者の大きな拍手と歓声を呼んだ。。
 
 
「島市」。佐久島島民によるあたらしい試み
八劔神社の入り口では、「島市」と名付けた島民有志による市が立った。三河湾で獲れたさまざまな魚の干物、焼き魚、飲み物、天草でつくったところてん、島の女性たちがつくったドライフラワーなどが並ぶ。佐久島には、直接観光客に商品を売るという経験が少なく、これまで土産物も積極的につくられてこなかった。島民による佐久島の特産品づくりの運動は、始まったばかりだが、年間を通じて開催されるイベントを契機に、少しずつ前進していく気配が感じられた。
 
 
音楽ワークショップ2
島の楽団「さあ、くりだそう編」
よみがえるにぎわい

佐久島太鼓の打ち込みを合図に「島の楽団」による八劔神社までの島内練り歩きがスタートした。これは、かつておこなわれていた太鼓の練り歩きのにぎわいを、ふたたび島によみがえらせようというものだ。ボランティアの大学生たちが引く太鼓を先頭に、さまざまな楽器を手にした人たちが長い列をつくって、海岸沿いの道を八劔神社に向かった。
 
突然の楽団の出現に、観光客が驚いてカメラを向け、興味深げに楽団の後を付いて来た。先頭の太鼓が東の渡船場にたどり着く頃には、楽団の行列は150人ほどにふくれあがっていた。渡船場前で行進を止め、佐久島太鼓の打ち込みをおこなう。新たに行列に加わった東地区の住人や、渡船場の職員たちが次々と力強い太鼓を披露し、飽きることのない佐久島太鼓の音色に、あたりを埋め尽くした人たちからさかんな拍手が起こった。
 
練り歩きを終え、八劔神社に「島の楽団」がたどり着く頃には、境内は300人を超える人でいっぱいになった。境内には、「野点体験」として、特設縁台が備え付けられ、名物「かしゃ餅」と抹茶がふるまわれた。すべて島の女性の有志によって準備され、実行された。お茶の先生も協力して、祭りの参加者をもてなした。
 
そのとき、境内では、「島の楽団」が演奏を続けていた。佐久島太鼓を叩くボランティアの大学生の真剣さに島民たちは大喜びし、ディジュリドゥを吹いてみる島民もいた。前日のフリーセッションへのとまどいも薄れ、楽器を交換したり、お互いの音に耳を傾けたりする姿も目立った。
 
やがて「島の楽団」は、自然に始まったディジュリドゥの演奏に、ワークショップ参加者たちが加わり、音楽は大きな波のように八劔神社の境内に満ちていた。最後は、そこになだれ込むようなかたちで早打ちの佐久島太鼓が加わり、激しいリズムは次から次へとバトンのように次の打ち手に受け渡された。そこには、音楽ということばによって、確かにコミュニケーションが成立していた。たくさんの笑顔を生んだ太鼓祭りは、2日間でのべ500人を集めた。
 
 
【関連情報】
 太鼓祭り
 太鼓祭りとは?
 音楽ワークショップ 『島の楽団』参加者募集のお知らせ
 同時期開催 小川信治展『パーフェクト・サクアイランド』

島民は会場を大漁旗で飾った
 

楽器を持って会場入りする島外からの音楽ワークショップの参加者
 

島民による佐久島太鼓の演奏
 

音楽ボランティアによるオーストラリアの民族楽器ディジュリドゥの説明
 

横笛とヴァイオリンのコラボレーション
 

島民の拍子に合わせて太鼓をたたく音楽ボランティア
 

音楽ワークショップの参加者たちも演奏に加わる
 

音楽ボランティアによるディジュリドゥの演奏
 

演奏を聴くひとたちで会場はいっぱいになった (太鼓祭り1日目写真撮影:原田秀春)
 
 

島の小中学生による佐久島ソーラン
 

特産品が並んだ島市はにぎわった
 

八劔神社で野点体験する音楽ボランティアたち
 

ボランティアと島民がいっしょに太鼓を引く
 

島の楽団の行列は150名に及んだ
 

島民が飛び入りで太鼓をたたく
 

ボランティアの大学生たちも大活躍
 

島民もディジュリドゥに挑戦
 

音楽ワークショップ参加者たちの熱演
 

はじめての太鼓祭りで、八劔神社は人であふれた
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■主催・問い合わせ先: 幡豆郡一色町
■共催: 一色町大字佐久島・島を美しくつくる会
■企画・制作: 有限会社オフィス・マッチング・モウル

快晴の佐久島の青空ににぎやかな音楽が響いた
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