三河・佐久島アートプラン21
佐久島体験2003 祭りとアートに出会う島
 
平田五郎 アーティスト・イン・レジデンス
佐久島空家計画2・制作記録 1
2002年5月18日(土)、19日(日)

3月に『佐久島空家計画1/大葉邸 ― 緑の庭 ―』を公開して二ヵ月半。早くも翌年に予定されている屋内作品化のプランづくりのために平田五郎が佐久島を訪れる。室内の採寸や、島民との打ち合わせを重ねた結果、7月の 『七福2002展』 で、『佐久島空家計画2/大葉邸』の ドローイング を発表し、制作プランがほぼ確定する。
 
2003年1月20日(月)、21日(火)

アーティスト・イン・レジデンス直前、大葉邸の室内作品化に当たり、基礎工事の施工担当者と最終打ち合わせ。さらに平田と企画担当であるオフィス・マッチング・モウル内藤は、本土側で数件の建材店で材料のチェック。その後、内藤は全国規模で材料に関する情報を求めて奔走することになるのだが、それはまた別のお話。
 
2003年2月2日(日)

午後1時30分の渡船で平田五郎佐久島入り。ひとまず、大葉邸の基礎工事の現場へ。大工の三宅さんともろもろ確認作業。太鼓祭りのイベントで音楽ボランティアとして活躍している田中さん(ガラス関係の加工会社勤務)が、作品に使用する大型ガラスを搬入してくれたので、すぐに設置工事が完了。すでに島に届けられていた寒水石25kg6袋を現場に運び、翌日からの作業道具をそろえたり、作業工程の段取りなどをおこなう。この日、ボランティア第一号の服部さんも島入り。一ヶ月に渡るアーティスト・イン・レジデンスの一日目がこうして始まった。
■ボランティア 1名/服部早紀(名古屋芸術大学) 
 
2月3日(月)

今回の大葉邸のプランは、屋内の一室の天井、壁、床のすべてを漆喰で塗るというもの。よく見かける漆喰壁ではなく、磨き漆喰という特殊なものであるため、強度などの関係で、土台になる木網セメント板の上に何層も細かさが違う下地を塗っていかなければならない、と平田さんが言うのである(本当にここまでややこしいことをしないといけないのか、疑いのまなざしを送る企画担当内藤。残念ながら漆喰の基礎知識がないので鋭い反論かなわず、来年度までに勉強しようと心に決めた冬の一日)。
そこで、川砂をふるいにかけ、水で何度も洗い余分な泥を落とす作業を日が暮れるまでおこなった。午後2時を過ぎると、急に海から吹く風が強くなり、寒さが厳しくなってつらい。そうして洗った水のうちの、さらに細かい砂を、基礎の木網セメント板の隙間に埋め込むために消石灰をよくこねて下地をつくる。これをとりあえずバケツ2杯分くらいつくり、一晩寝かせておくのだ。作業は夜8時過ぎまで続いた。この日の午後から、昨年も大葉邸のボランティアに来てくれた名古屋芸大の尾野くんが合流。
■ボランティア 2名/服部早紀、尾野訓大(名古屋芸術大学) 
 
2月4日(火)

朝から大葉邸では、前日寝かせておいた下地を再びこねるのだが、これが、ものすごく力のいる作業。午後からは、第一の下地を木網セメント板に薄く塗っていった。同時進行で、残りの砂を洗う作業もおこなう。さらに、前日洗った荒い方の川砂を消石灰と混ざりやすいように天日で乾燥させた。本日の砂洗いは、ボランティアの尾野くんと、内藤が担当。日が暮れて、視界が利かなくなる頃に、ようやく洗い作業を終了。最初25袋あった川砂が残り8袋まで減る。つらい作業も、あと一息。一方、下地塗りを開始した平田さんとボランティアの服部さんは、慎重に一層目の下地を塗る。日没後は尾野くんもそこに合流。結局、大葉邸での壁塗り作業は本日も午後8時頃まで続いた。
この日の午後、それまでみんなが寝泊りする民家(通称=合宿所)で、食事やもろもろの仕事を担当していたオフィス・マッチング・モウルの池田が一旦島を出る。池田と、別件で島を訪れていた名古屋芸術大学講師の高橋綾子さんがつくっておいてくれた夕食で、一日の疲れを癒した。
■ボランティア 2名/服部早紀、尾野訓大 
 
2月5日(水)

平田五郎さん、38歳のお誕生日おめでとう! というわけで、2年続けて佐久島で誕生日を迎えた平田さんは、誰にも祝福のことばをかけられないまま、(内藤に)せきたてられるように現場へ。昼食後、平田さんからいきなり「川砂が足らない」と言われ、計算してみたところ30袋も追加で必要であることが判明。昨日、25から8袋まで洗った砂袋に、また31も追加されるという恐ろしい現実に、持てる理屈のすべてを投入してやめさせようとする内藤だったが、予想通り無駄な抵抗となる。だいぶ顔なじみになってきた本土側にある建材屋さんに追加の注文。もはや蟻地獄に落ちたアリさんの気分。しかし、どの展覧会も一部例外をのぞけばたいていこうなるのだ。何故っ?
本日は、平田さん、尾野くんが大葉邸の壁塗り作業。服部さんと内藤は潮風に吹かれながら砂洗いを夕暮れまで。すべての作業修了は午後8時半だった。晩御飯のあと、デザートのシュークリームをケーキ代わりに、みんなで平田さんの誕生日を祝った。
■ボランティア 2名/服部早紀、尾野訓大 
 
2月6日(木)

ひたすらに壁塗りと砂洗い作業に終始。作業終了は午後8時。
■ボランティア 2名/服部早紀、尾野訓大 
 
2月7日(金)

ぬりかべと砂かけ婆の一日。午前中、服部・内藤コンビで初回注文分の砂をすべて洗い終わるも、午後からその努力をあざ笑うように新たな31袋が到着。泣ける。本日、いったん帰宅する予定だった尾野くんは、佐久島発最終便の時間を間違えて船に乗り損ね、結局この日も佐久島泊まりとなった。これは、平田さんと内藤の陰謀ではないのだが、ある意味思うツボとも言う。そして午後9時過ぎまで作業は続くよどこまでも。夕食には、島民からいただいたナマコを内藤が酢の物にして出す。尾野くんの大好物だそうで、よかったよかった。たくさんお食べ、死ぬほどあるから……。
■ボランティア 2名/服部早紀、尾野訓大 
 
2月8日(土)

他の3人が寝ている間に、始発便で島を出て行く尾野くん。入れ替わりに池田が食材など大荷物を抱えて再び島へ。前回の栗本百合子展のレジデンスでもボランティアに来てくれた酒井さんも同じ船でやってきた。午後には1週間がんばってくれた大学生ボランティアの服部さんが、就職活動のため帰っていった。そして、昨年度の大葉邸ボランティアとして大活躍してくれた、愛知県立芸術大学の高木さんがやってくる。さらにナマコをいただく。一生分のナマコを食べる。
■ボランティア 3名/服部早紀、酒井敏子(名古屋市)、高木志瑞子(愛知県立芸術大学) 
 
2月9日(日)

午後からは、佐久島で地域づくりNPOの活動をしている佐竹さんが駆けつけてくれた。男手(つまりは力仕事担当)がやってきて平田さんも一安心。壁塗り作業と、漆喰練り作業の2班に別れての一日。島民からアサリの差し入れあり。佐久島のアサリは日本一! ありがたいことです。
■ボランティア 3名/酒井敏子、佐竹鑑(春日井)、高木志瑞子 
 
2月10日(月)

池田が島を離れ、入れ替わりにまた内藤が平田さんに頼まれた材料(寒水石3厘1袋、磨砂1袋、防塵マスク、ブロック鏝、バケツなどなど)と、一週間分の食材を抱えて来島。今日から一週間は内藤が食事担当だ。やれやれ。作業は相変わらず壁塗りと漆喰練の2作業。永遠にこれが続くように思える。作業は8時過ぎまで。
■ボランティア 4名/酒井敏子、高木志瑞子、佐竹鑑、尾野訓大
 
2月11日(火)

壁塗り作業はかなり過酷だ。素人の親方(平田)が素人の職人(ボランティア)に指導しているのだから、そんなにはかどる訳はない。午後8時、体調不良で尾野くんだけが先に戻ってくる。どうやら熱があるらしい。すぐに寝かせる。平田さんと高木さんは10時頃まで現場で作業。みんな大丈夫なのか?
■ボランティア 3名/酒井敏子、高木志瑞子、尾野訓大
 
2月12日(水)

前日夜から不調を訴えていたボランティアの尾野くんが発熱。大事をとって午前中に自宅に帰す。一色港渡船場まで、マッチングモウル池田を迎えに来させ、自宅まで送り届けた。一色港発3:50分の渡船で、新たなボランティアとして、愛知県芸術大学の林くんが佐久島入り。昨年から、個人的に2度ほど佐久島を訪れており、アーティスト・イン・レジデンスに興味を持っていた、とのこと。嬉しいですね。この日は、天井の漆喰を磨く作業が始まり、作品完成後がイメージできる状況になった。本日の作業は、壁磨き、壁塗りと土捏ね。素人には 難しい作業で、なかなか進まない。午後11時まで作業し、夕食をとった。食事だけが楽しみ、という状況。あれこれメニューを考えるのもたいへん。
■ボランティア 2名/高木志瑞子、林清英(愛知県立芸術大学)
 
2月13日(木)

一色港発11:15分の渡船で、ボランティアとして、静岡芸術文化大学3年山口さんがが佐久島入りし、大葉邸の作業に合流。大学でアート・マネジメントの勉強をしているそうだ。午後2時半まで、昼食もとらずに作業。本日の作業は、壁磨き、壁塗りと土捏ね。1時間の昼休み後、内藤、山口ペアで砂洗いアゲイン。それを日没まで。山口さんはその後、ふたたび大葉邸の作業に向かう。午後9時半まで作業。疲れているのに、夕食後の後片付けを手伝ってくれるボランティアたち。ただ、感謝するのみ。本日、島民から大量の野菜の差し入れあり。ありがたくて涙がでる。早速、新鮮野菜をたっぷり使ったサラダを作る。島の野菜はとても甘くて美味しい。海風のせいか? それとも、土の成分のせいか?
■ボランティア 3名/高木志瑞子、林清英、山口潤子(静岡文化芸術大学)
 
2月14日(金)

相変わらずの作業が連日夜遅くまで。山口さんは最終便ぎりぎりまで作業して島を離れた。この日はバレンタイン・デー。平田さんと林くんにチョコレートのプレゼント。平田さんに、遠方のガールフレンドから、チーズケーキとチョコレート・ケーキの差し入れが届く。夕食後、2種類のケーキをみんなでいただく。肉体労働の毎日は、甘いものをものすごく必要とするのだ。幸せな気持で眠りにつく私たち。
■ボランティア 3名/高木志瑞子、林清英、山口潤子
 
2月15日(土)

9時15分の渡船で、ふたたび酒井さんがやってきた。この人が来ると、現場がすごく和む。某市の職員で普段は事務仕事をしている人だが、本当に現場向き。この日の作業は、壁塗りと漆喰練り。室内は、床を残してほぼ壁塗り完成。磨き作業にかかっている。翌日には、床の一部を塗り始められる予定。この日は、名古屋方面から公開制作の見学者の方々が7名ほど訪れる。その中のひとりは「豆腐アーティスト」の方で、内藤もテレビで見たことがあった。佐久島でのアート・プロジェクトに興味を示していただいたようだ。さて、肉体労働は甘いものだけでなく、食べ物の量も必要とする。10kgの白米が、あれよあれよという間になくなってゆく。平田さんからのリクエストで、夕食の分量をさらに増やす。
■ボランティア 3名/高木志瑞子、林清英、酒井敏子
 
2月16日(日)

またあたらしいボランティアの早崎さんがやってくる。彼女は、某市の運営するガラス工房に勤務している人。初めてなのにものすごく手際がいい。今日から、庭に面した部分の壁塗りが始まる。この日の作業は午後11時まで。なんというか、ランニング・ハイみたいな状態。若くなければとてもできない。今回、一般にボランティアを募集しなかったり、島民に作業を頼まなかった理由は、作業があまりに専門的過ぎて、1日とか数時間の参加では、とても仕事が覚えられないから。それだけに、作業なれした人、長期滞在者に負担がかかってしまう。課題は多いが、与えられた条件下で「不可能を可能にする」強引な私たち。せめてもと、疲れてお腹をすかせた作業班のために、島の野菜をことこと煮たポトフはみんなに大好評。平田さんも絶賛してくれたよ。お母さんは嬉しい(涙)。
■ボランティア 4名/高木志瑞子、林清英、酒井敏子、早崎志保(岡崎市)
 
(文責:オフィス・マッチング・モウル内藤)
 
 
【関連情報】
 2002年度 『平田五郎展 佐久島空家計画2/大葉邸』
  展覧会とアーティスト・イン・レジデンスのお知らせ

 2001年度 『佐久島空家計画1/大葉邸 ―緑の庭―』
  展覧会とアーティスト・イン・レジデンスのお知らせ

 2001年度 『佐久島空家計画1/大葉邸』・制作記録
 2001年度 『佐久島空家計画1/大葉邸』・写真レポート


今回のレジデンスの舞台はこの部屋
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

庭から基礎工事のすんだ屋内を見る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

川砂を洗い泥の成分を除く
 

洗った川砂に消石灰を混ぜる
 

洗った川砂を天日で乾燥させる
 

漆喰の配合は難しい。これを寝かせてから使う
 

下地塗り作業は天井からスタート
 

今年も佐久島で誕生日を迎えてしまった平田五郎(左)
 

この姿勢での作業はかなり辛い。がんばれ! 平田五郎とボランティアたち
 

平田の心を癒すペットの植物たち。わざわざ佐久島まで持ってきた。
 

インドに永住してしまったコレクターからもらったお気に入りの羊歯。「やすお」という名前まで付いている
 

『緑の庭』で、束の間おやつタイム
 

漆喰練りは試行錯誤の連続
 

大葉邸の幽霊―ではなく、平田五郎
 

夕食後、談笑のひととき。笑顔は疲れに効く
 

これが磨き漆喰(途中)だ!
 

磨く光る磨く光る、うぉ〜っ!
 

砂洗い隊参上! ゴム長がポイント
 

島民から差し入れられた野菜。美味しいんだこれが
 

ハッピー・バレンタインデー
 

室内、かなり塗れてきました
 

ぶうちゃん、がんばれ!
 

毎日大量の洗濯物。晴れた日は嬉しい
 

庭に面した部分の塗りが始まる
 

床の一部を塗る。周りを足場に壁磨き
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■主催: 幡豆郡一色町
■共催: 一色町大字佐久島・島を美しくつくる会
■企画・制作: 有限会社オフィス・マッチング・モウル

台所でフナムシ君発見! さすが島
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