三河・佐久島アートプラン21
佐久島体験2007 祭りとアートに出会う島
 
  
平田五郎展 『佐久島空家計画5/大葉邸』
制作リポート 1
2007年6月10日、7月31日〜8月8日
事前作業 6月10日(日)

出産の苦しみ・痛みといいうのはとてつもないものなのに、産んだ直後にその苦痛はあらかた忘れ去られ、時を経てまた苦しんで人類は子孫を残していくのだ。佐久島に於ける大葉邸の作品化もどこかしらそれに似ている……。というわけで、すでに4度も産みの苦しみにのた打ち回った挙句「もう二度とやるか!」と絶叫していたはずなのに、5度目の制作を始めてしまうなんて、私たちって一体? しかし、既に制作は決定している。サイは投げられたのだ。誰だ、投げたのは? そんなこんなで6月、平田五郎とマッチングモウルのスタッフは佐久島・大葉邸を訪れ、各所を測量・調査。夏に始まる大葉邸の制作は、既にこの時点から始まっている。
 
 
7月31日(火)

8月3日から平田五郎が佐久島入りするのに先立ち、スタッフとボランティア1名の先発隊が佐久島へ。レンタカーをチャーターして山のような材料、工具を満載し、渡船場へ到着すると、地元の建材屋さんが既に用意してくれていた土、砂利、消石灰などがセメント袋、土嚢袋入れられ桟橋にうず高く積み上げられている。ふぅ、これを全部運ぶのか、島まで、そして大葉邸まで、女ふたりで(遠い目)。材料のあまりの重さに、やや傾きながら出港する町営渡船。怒涛の日々が、今、始まった。途中、NHK名古屋放送局の取材あり。炎天下でヤートセを踊ったりして確実に体力を消耗。取材後、日が沈んで真っ暗になるまで、大葉邸への材料の運び込み、作業のための養生などが着々と続いた。
■ボランティア 1名/黒目利江(愛知教育大学大学院)
 
 
8月1日(水)

本日は、さらに2名のボランティアが駆けつけてきてくれた。ひとりは、大葉邸のスタート時から学生ボランティアとして参加し続けてくれる高木さんことぶうちゃん。平田五郎がもっとも頼りにするボランティアのひとり。もうひとりは、今回初参加、静岡からたったひとりでやって来た柴田麻見さん。女ばかり4人となった作業班は、防塵マスクを装着し、大葉邸の土間をクワとシャベルでひたすら掘り返し、掘り出した土をバケツに入れて庭の一角にある巨大な土嚢袋に運び続けることに明け暮れる。今年の夏の暑さと、ホコリと労働でフラフラになるまで作業は続く。最終便で黒目さん、激しく惜しまれつつバイトのために一時的に島を去る。早く戻って来て〜っ!! 疲れきって泥のように眠る。
■ボランティア 3名/高木志瑞子(常滑市)、柴田麻見(静岡文化芸術大学)、黒目利江
 
 
8月2日(木)

土間の掘り返し作業2日目。明日は平田さんが佐久島入りするので、この日までに土間の土をすべて撤去しておかなければならない。ひたすら掘っていると、固い部分に到達。クワをふるってもビクともせず。「これはコンクリートだよね」と一堂納得して、とりあえず土間堀り作業は終了。時間があるので夏草が育ってしまった庭の草取りを開始。3人で黙々と草取りしていると、島の高校生キキちゃんと姉のサクラちゃんが手伝いに来てくれた。ありがとう!! 5人がかりだとあっという間に庭はきれいになった。さらに外がまだ明るかったので、佐久島は初めてという麻見ちゃんを車でアート作品巡りで島を案内。準備万端整ったし、後は平田さんを待つばかり! という束の間の休息を味わう、がこれが大きな間違いだった。そのココロは!?
■ボランティア 2名/高木志瑞子、柴田麻見
 
 
8月3日(金)

平田五郎、ついに佐久島入り。同じ船で、佐久島ボランティアのお姉さん的存在の酒井さんこと敏ちゃんも来島。ぶうちゃん、敏ちゃんと平田さんには頼れる、そして頭のあがらないベテランボランティアががっちり脇を固めた。まず大葉邸の土間の状態をチェックする平田さんは「コンクリートなのでこれ以上掘れない」と報告する我々の前で、そのコンクリートにクワを振り下ろす。するとどうだ!? コンクリートなはずの土間が、なぜだかざっくりと掘り起こされるのであった。「もう〜!! これコンクリートじゃないよ。元々の大葉邸の土間だよ」と平田さんに告げられ、呆然とする私たち。百年程前、実に本格的に打たれた土間をコンクリートと見間違ったのであった。
 
平田さんも交え、さらに偽コンクリート部分を全部掘り返す作業が始まった。アルバイトのために本土に戻るぶうちゃんと共に、平田さんの展覧会のDM、ポスターの色校のため、マッチングモウルスタッフも島を離れる。ごめん、平田さん、敏ちゃん、後は任せた! 麻見ちゃんをよろしく。がんばってね〜。予定が狂ったという平田五郎の呪いの言葉を聞きながら、いそいそと島を去る私たちなのであった。
■ボランティア 3名/酒井敏子(名古屋市)、高木志瑞子、柴田麻見
 
 
8月4日(土)

この日の午後、京都からボランティアの松本君がやって来た。今回のボランティアでは初めての男子だ。ここに来る女子たちはそんじょそこらのヤワな男子よりよほど使えるツワモノではありますが、とにかく若い労働力は熱烈歓迎。来るはずだったボランティア1名が、暑気あたりで島にたどり着く前にダウン。士気がやや下降気味なれど、明るく元気な松本君の作業合流は有難し。この日は土間の上り段の枠組みにも着手。敏ちゃんが食事係として料理で労働をねぎらうのであった。
■ボランティア 3名/松本大樹(同志社大学)、酒井敏子、柴田麻見
 
 
8月5日(日)

この日はこれまでで一番ボランティアの人数が多かった。社会人の高崎シスターズは丁寧な仕事振りで平田さんの評価高し。初めて参加した制作ボランティアとのことだが、根気良く作業をしてくれる。一方、元気印の松本君は、さすが若いだけあって、文系男子にも関わらず作業テンションが下がらず。ここに来て、やっと大葉邸制作っぽい活気が出てきた。この日から黒目さん復活。待ってました!! 細やかな心遣いでみんなの飢えをカバーしてくれた食事班の敏ちゃんはこの日まで。また女の子ひとりでやって来て(偉い!)5日間もがんばって作業してくれた柴田麻見ちゃんもこの日で終了。ホントにお疲れさま。あなたがいると何となく和んだよ! ふたりとも最終便ぎりぎりまで作業をしてくれました。ありがとうね。
■ボランティア 6名/高崎雅代・高崎聖子(豊田市)、松本大樹、酒井敏子、柴田麻見、黒目利江
 
 
8月6日(月)

本日、土間の上り段終了。養生をして、今度は土間作業へ以降。先は長いがまた人手が減って平田さん、ちょっとイライラ。本当は水屋戸棚制作に集中したいところだが、実際に土間打ちなんてボランティアの誰もが出来るはずもなく、平田さんだって本格的なのは初めてなわけで、結局土間作業の指導に時間を取られてしまうのだった。それでも、この日から断続的に水屋戸棚の制作を開始。明日からまたボランティアの人数が減ることについに平田さんがイライラを爆発させ、マッチングモウル内藤と恒例のバトル。今の内に少しでも作業を進めようと、暗くなるまで制作。食事を済ませ、お風呂に入った後、内藤はボランティアたちと海水浴場に夜の散歩。流れ星がいっぱい。全員流れ星を目撃できた。「どうか作業が順調に進みますように」星に願いを……。帰ったら暗い顔した平田さんが待ち構えていて、結局午前2時頃まで説得工作。お互い不承不承納得して気持ちを新たに明日からまた作業にがんばろうと誓う。やれやれ。
■ボランティア 4名/高崎雅代、高崎聖子、松本大樹、黒目利江
 
 
8月7日(火)

高崎シスターズがこの日のお昼で作業終了。お疲れさまでした。島内で創作料理のお店をやっている水谷さんが平田さんとボランティアを明日夜夕食に招待してくださると言う。絶品料理をダシに、明日昼に帰る予定だった松本君にもう一泊するように激しい説得工作が繰り広げられる。松本君、説得に応じて帰還を一日伸ばしてくれることになった。ありがとうありがとう。明日は終日松本君がいてくれるので心強い。すべてを黒目さんに託して、マッチングモウル内藤は本土での打ち合わせのため、最終便で島を離れた。
■ボランティア 4名/高崎雅代、高崎聖子、松本大樹、黒目利江
 
 
8月8日(水)

午前中、待ちに待ったぶうちゃんが帰ってきた。ぶうちゃんは平田さん付きで水屋戸棚の制作サポートに当たる。9日からまとまった人数(しかも男子3名)が来るので、すぐに作業にかかれるように、もろもろ事前準備も同時進行。この日は少し早めに作業を終了し、水谷さんのお家へボランティア3名と平田さんの4人でお呼ばれに行く。素晴らしい料理に一堂大感激。平田さんの疲れも吹っ飛んだことだろう。感謝。
■ボランティア 3名/松本大樹、黒目利江、高木志瑞子
 
 
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【関連情報】
 平田五郎 アーティスト・イン・レジデンス 2007
 平田五郎展 『佐久島空家計画5/大葉邸』
 『佐久島空家計画5/大葉邸』 制作リポート2
 『佐久島空家計画5/大葉邸』 制作リポート3
 『佐久島空家計画5/大葉邸』 写真リポート

 
【同時期開催】
 佐久島アート・ピクニック 2007
 となりのおみせ プロジェクト 2007

 
束の間、島のダチョウと戯れる平田さん。平和なのは今のうち
老朽化してボロボロになった土間の上り段。今回はここにも手を入れる
土間を掘り返す黒目さん。土ぼこりで写真はくもりがち
大学1年から大学院修了後も大葉邸ボランティアに来てくれるぶうちゃん
掘り返された土間の土
土間掘り終了後、庭の草取りをしていたら、島の高校生がお姉さんといっしょに手伝いに来てくれた
宿舎で晩御飯。ぶうちゃんと麻見ちゃん
8月3日平田五郎佐久島到着の瞬間
5日。土間の上り段枠作りに着手
新たなボランティアたちを加えて、にぎやかな晩御飯はカレーライス
6日。上り段に土を入れて叩きしめる。松本君、ガンバレ!! 大丈夫か!?
松本君とは正反対に、丁寧に確実に叩きしめる高崎シスターズ。上手だ
予定より3日程遅れてやっと水屋戸棚の制作に入った平田さん
高崎シスターズは7日の午後で作業終了。お疲れさまでした
残された3人は遂に土間打ち作業へ
8日。再びやって来たぶうちゃんは平田さんのアシスタント状態
井戸の水汲みもマスターした松本君
にかわを溶いたりしている平田さん
水谷さんの家で晩御飯をご馳走になる平田さん。美味しい料理と楽しいおしゃべりでエネルギー充電できたはずだ
みんなの心もお腹も癒してくれた素晴らしい料理の数々

 
 2007年度全記録
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■主催: 幡豆郡一色町
■共催: 一色町大字佐久島・島を美しくつくる会
■企画・制作: 有限会社オフィス・マッチング・モウル
土、砂、砂利、消石灰、にがり水を配合する平田さん
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