三河・佐久島アートプラン21
佐久島体験2009 祭りとアートに出会う島
 
 
ふるかはひでたか『佐久島物産展』
写真リポート
展覧会風景
 
佐久島物産
佐久島物産「おしんと茂市」より ≪貝合わせ≫
佐久島物産「とじょうふなおさもりれしぴぃ」/「とくじょうふなおさもり」(見本)
 
佐久島物産「重吉鏡」
 
 「鏡の記憶・カムサスカの石 紫石英」/「鏡の記憶・カムサスカの石 水晶」
資料 「平城宮木簡」/佐久島物産「木簡 鹿せんべい」
 
 
浜辺のカケラ〜島のかたち「佐久島」
「主水セレクション」

 
 
 
【関連情報】
 ふるかはひでたかワークショップ 開催のお知らせ
 ふるかはひでたかワークショップ 写真リポート1
 ふるかはひでたかワークショップ 写真リポート2
 ふるかはひでたか 『佐久島物産展』 開催のお知らせ

【同時期開催】
 佐久島アート・ピクニック 2009

ふるかはひでたか
         『佐久島物産展』
2009年7月11日(土)
      〜9月23日(水・祝)
会場:弁天ギャラリー 

 
 
歴史を横糸、アートを縦糸に
 
ふるかはひでたかによる佐久島での初めての個展、 『佐久島物産展』 は、不思議な展覧会だった。私たちは、作品を通して島の歴史の側面を知り、島が持つ豊かな歴史的背景を新鮮に感じることができた。紛れもないアートを通して、そういう体験ができる知的快感は得難いものだ。
 
本展は、一見博物館の歴史展示のような印象を持っている。展覧会に際して、アーティストは下記のようなメッセージをくれた。
 
「佐久島物産展」は、島内外の取材を通して勝手に作り上げたり、 認定したりした、架空の特産物=「佐久島物産」を中心とした 美術展です。展示物も「佐久島物産」というワリには、島以外の土地の既製品や、 実際には、在りもしないものなども、幾つか混ざっていたりと、 ちょっと風変わりな展覧会です。
 

佐久島物産 道具「高杯」
 
『佐久島物産展』 は、丁寧に調査された歴史的な事実と、ふるかは独特のユーモア、構成力、美意識などが複雑にからまりあっている。ふるかはによって認定された「佐久島物産」には、現在の佐久島の特産品である「アサリ」や「コノワタ」などと同様、過去の特産品も含まれている。
 
たとえば奈良の平城宮跡から発掘された木簡に記録が残っている「サメの干物」も展示されている。佐久島にはもうないが、古来海を介して佐久島と頻繁に交流のあった伊勢地方には現在も残っていて、今回は志摩と熊野の物が展示されている。鑑賞者は、佐久島のものではないこれら現在の「特産品」を目撃し、不可解に思うだろう。そこに隠れている現在とは異なる交通(人、モノの流れ)に気づくのには時間がかかる。
 
この展覧会を成り立たせていて、目には直接見えない要素が「時間」であり、私たちは作品を通して、見えない時間(歴史)のダイナミックさを感じることができるのだ。これはとても楽しい経験といえよう。アートの持つ豊かな可能性が、その体験をささえている。
 

佐久島物産「重吉鏡」(新)、(旧)
 
『佐久島物産展』に登場する歴史資料は少なくない。こんな小さな島の中にも特筆すべき歴史的な、できごとが多々あることは驚きである。『佐久島物産 おしんと茂市 貝合わせ』には、島の南南西にある心中鼻と呼ばれる岬の名は「船乗り茂市と、島の船宿女中おしんとの、悲しい恋の物語」が由来となっている。
 
ふるかはは「貝合わせ」によって、ふたりの結びつきを作品化した。「貝合わせ」は、本来は平安貴族の優雅な遊びから始まり、江戸時代は大名の嫁入り道具にもなっている。ハマグリに金蒔絵で描かれた雅な情景が、素朴な島の大アサリに写された「佐久島的貝合わせ」は、見る者を思わず微笑ませるだろう。
 

浜辺のカケラ〜器
 
展覧会の中で、佐久島出身の船頭重吉の漂流エピソードは、さまざまな角度で作品化された。遠州(静岡)沖で嵐のため遭難して太平洋上を一年以上の長きに渡って漂い、カリフォルニア沖でイギリス船に救助された重吉の漂流と帰還の経緯は、相馬藩士・池田寛親によって聞きとられ、「船長 日記」としてまとめられている。
 
展覧会では、船長日記〔再現本〕、重吉が持ち帰った鏡の再現による作品・鏡の記憶、重吉の漂流と帰還の経緯をもとにふるかはが考案した架空の料理「船盛り」にふるかは作品の魅力が凝縮されている。資料の絵を元に再現された鏡は、新品だった当時のものと、時代を経た現代の状態があり、それをつなぐものとして用意されたいくつかの鏡には、やはり重吉が持ち帰った数々の品々が再現され映りこんでいる。「鏡の記憶」というタイトルは作品の本質をスマートに現わしていた。
 
また、サンプル食品でつくられた奇妙な料理・「船長盛り」のレシピは、「船長日記」池田自筆本の複写から文字を拾い集めて合成したというこりに凝ったもので、ユーモアと緻密さが仲良く同居していて楽しい。
 

資料「主水セレクション」
 
他にも、江戸時代から現在まで島で踊り伝えられている盆踊り「ヤートセ」を主題に、こちらはかなり本格的な歴史資料を展示しながら、ヤートセの元歌の主人公である「鈴木主水(すずき・もんど)」にちなんで、資料全体を「主水セレクション」と名付けるなど、ユーモラスな魅力にあふれている。「主水」の漢字が読めない人にはさっぱり意味がわからないハードルの適度な高さもよく、なかなかどうして、大人な展示と作品なのである。
 
(文責:オフィス・マッチング・モウル 内藤美和)
 2009年度 全記録
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■主催: 幡豆郡一色町
■共催: 一色町大字佐久島・島を美しくつくる会
■企画・制作: 有限会社オフィス・マッチング・モウル

フェイクに紛れ込む本物の歴史資料(復刻)にくらくらする知的な快感。
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