三河・佐久島アートプラン21
佐久島体験2012 祭りとアートに出会う島
尾野訓大・福津宣人・松永久彦
『佐久島 遍路展』
写真リポート
尾野訓大 『せつなの時積』
タイプCプリント 508×610mm 2012
福津宣人 『momoka 0930 0413 2012』
oil on canvas 1620×1620mm 2012
松永久彦 『ふたつの輪』
ミクストメディア 2100×3300mm 2012
展覧会会場 全景
関連情報
『佐久島 遍路展』 開催のお知らせ
2012年度 年間スケジュール
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尾野訓大・福津宣人・松永久彦
『佐久島 遍路展』
会期:2012年4月14日(土)〜7月16日(月・祝)
会場:弁天サロン内ギャラリー
本展は、佐久島で初めて作品を発表する三人の作家が、「遍路」をテーマに写真(尾野)、絵画(福津)、立体(松永)という異なるメディアによって制作した作品によるグループ展である。
尾野訓大
参加作家の中で1982年生まれと最も若い
尾野訓大
は、5枚の写真によって構成された
『せつなの時積』
を制作。数百キロの距離を車で走り、フロントグラスに据え付けたカメラで長時間露光撮影している。作品上の直線道路は、海辺を走り、山路を行った道程の平均値であり、焼き付けられた画像には、おびただしい時間と距離が堆積している。ひたすらに歩き続ける遍路という行為が、5枚の写真によって現わされていた。
福津宣人
福津宣人
による絵画作品
『momoka 0930 0413 2012』
では、一見「遍路」とは関係ないような日常風景がモチーフになっている。すべての物は連続していおり、規則性のあるものが合わさった時に新たな関係性が生まれると捉える福津が描く対象は、すべて模様の組み合わせによって描かれている。キャンバスは無数の6片の花びら模様で覆われ、その繰り返される行為をアーティストは「遍路」と重ね合わせる。
松永久彦
松永久彦
作品は、壁に掛けられた大きな
『ふたつの輪』
。「数珠」を連想させる二種類の輪は、それぞれ八十八のパーツによって成り立っている。右側の輪は、松永が佐久島の浜辺で拾い集めた漂流物や石などで構成され、それは佐久島の遍路を現わしている。左の輪は、急須や石けん箱など、日常的な生活道具が集められている。日常は、佐久島遍路と交わり、遍路姿のように真っ白に漂白される。
佐久島にあり、また全国各地に大小さまざまな規模や形態で存在する四国八十八ヶ所巡りの「写し霊場」は、明治から大正にかけて興った流行の産物だ。それは当時の大ブームであり、一色町誌によれば佐久島弘法の成立には明確に「観光客の誘致」が設立の目的とされていた。しかし、先人が目指した経済効果という目標は時間によって洗い流され、漂白され、現在の島民にとっては、それ以前から存在する他の信仰と同じように「昔からあるもの」という歴史の一部となっている。
しかし、それが「遍路」というかたちを取る限り、ささやかな細部にも遍路の本来の意味は宿り続ける。それほどに、「遍路」は私たち日本人に強く、特別なイメージを喚起させるのだ。本展に出品された作品は、異なる角度から「遍路」について私たちに問いかけてくる。
(文責:オフィスマッチングモウル 内藤美和)