三河・佐久島アートプラン21
佐久島体験2019 祭りとアートに出会う島
田中翔貴『海を見に行く』
Shoki Tanaka / Look like a sea
写真リポート2 [展示風景]
撮影:香村聖文
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田中翔貴『海を見に行く』
会期:2020年2月22日(土)
〜5月10日(日)
月曜休館
会場:弁天サロンギャラリー
白く明るい光に満たされた清潔な空間に並ぶ9点の写真作品が本展の展示のすべてです。少ない点数ながら、その1点1点は実に多くの情報で満ちています。そこにあるのは、展覧会タイトル『海を見に行く』にふさわしいモノクロームの海の風景――。正面に展示された作品には「陸桟橋/大島」というタイトルがつけられています。
「ああ、大島に続くあの場所ね」。佐久島をよく知っている人ほど、作品の中の風景を実際の場所の記憶と結び付けてしまうことでしょう。けれど、作品を見続けているとやがて気付くのです、それがどこにもない風景であることを。
田中翔貴は展覧会がスタートする1年以上前から、何度も島に足を運び、たくさんの写真を撮影しました。普段は山間地域に暮らしていることから、島という場所、海の風景はとても新鮮に映ったそうです。もちろん、実際の海の景色も撮影しました。そして撮影した写真の印画紙を手に取りさまざまな角度から眺めていた時、海ではない景色の中に、海を見つけました。それが本展を構成する作品です。
それは、いわゆる「見立て」と言えますが、それだけでなく、強く吹く潮風や雨などの「自然」とそれが幾重にも積みあがり織りなした「時間」を素材にして内包された海を写し出しています。それはまるで絵画のようです。
静謐な美しい表現ですが、それでも、付けられたタイトルの「あまりにその場所らしさ」にクスリと小さく笑みがこぼれてしまいます。さて、では、田中翔貴はどんな被写体の中に海を見出したのでしょう? それは、ポスターにも使われ、ギャラリーの一番奥に展示された「陸桟橋/大島」をよく見ればおわかりになるはずです。作家のこの視点を拝借して佐久島を歩けば、風景はきっと違って見えてくることでしょう。
ギャラリーには、展示された作品の「下絵」ともいえるたくさんの島のスナップ写真が製本されて置かれています。「ゆっくり作品と過ごしてもらえるように」と用意された作家お手製のベンチに腰掛けて、本のページをめくってみれば、そこにはもうひとつの佐久島、別の田中翔貴の作品世界との出会いが待っています。
(文責:オフィスマッチングモウル 内藤美和)