三河・佐久島アートプラン21 佐久島体験2003 祭りとアートに出会う島 弘法巡り+アート・ピクニック2003
リポート
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子どもが大人に、大人が子どもになる『ガリバーの目』
5月10日から始まった 『弘法巡り+アート・ピクニック』 (7月20日まで)。西は弁天サロン、東は渡船場のどちらからでもスタート、ゴールできる。ルート内には10ヶ所のスタンプ・ポイントがある。スタート地点で無料配布している、スタンプ・シートもかねた 「弘法巡り+アート・ピクニックMAP」 と、さらに詳しい地図である 「佐久島体験MAP」 を片手に、さあ佐久島探検にでかけよう! 西のスタート地点であり、ひとつ目のスタンプ・ポイントである弁天サロン(木村崇人ビデオ作品『島と人』を上映)近くの崇運寺。ここには、木村崇人作品『ガリバーの目』が港を見下ろす場所に設置されている。子どもたちはまずふたつ目のスタンプをゲット。その後、おもむろに『ガリバーの目』をのぞき込む。この作品(巨人の視点で風景を見ることができる装置)を体験した人たちの反応は、とても楽しい。その視点は、言葉で説明するのは難しく、写真で撮影することもできない。その感覚をあえてたとえるなら、目の前の風景が、まるで特撮映画の模型のようにまったく違うものに見える――そんな感覚だ。小さな子どもは巨人の目を獲得することに驚愕し、また大人は新しい世界との出会いに子どものように狂喜する。この体験に驚嘆しない人は、まず、いない。 潮風に吹かれて――『海の風見鶏』 『ガリバーの目』のある崇運寺の境内を抜けて、白浜海岸から堤防沿いにしばらく歩く。侵食された地層の続く道も楽しい。そのうち、海の中に数十本の棒が立っているのが見えてくる。かつて佐久島で海苔養殖がおこなわれていた時の、名残りの鉄パイプだ。すっかり錆びて、傾いたり倒れたりしているものもあるが、その20本ほどの鉄の棒の先に、ひとつずつ、鳥がとまっているのに気付くだろう。これが木村崇人作品『海の風見鶏』、3つめのスタンプ・ポイントだ。風見鶏は、佐久島にもたくさん飛来するユリカモメを模してつくられている。潮が引いていたら、近くの階段から浜辺に降りてみよう。風見鶏が読む風向きを見て、はじめて「風がどこから吹いてくるのか」を実感することもあるのではないだろうか? 天気のいい日には、しばらくそこで過ごしたい、そんな場所だ。 『大葉邸』から『現象の家』へ。 それは佐久島空屋ワンダーランド。 西地区の路地は迷路のようだ。地図と看板をたよりに、少し迷いながら行くのが楽しい。4つ目のスタンプ・ポイントは、近頃すっかり佐久島の観光名所となった平田五郎制作の 『佐久島空屋計画/大葉邸』 。室内見学は申し込み制だが、庭だけならばいつでも見学できる。 大葉邸からすぐのところにあるのが、木村崇人作品『現象の家』。ここが5つ目のスタンプ・ポイント。屋内には『潮の法則』と『光の法則』の2作品が設置してある。『光の法則』は、古い雨戸に空いた節穴をピンホールとして利用している楽しい作品。まっくらな室内に入ってスクリーンにうつっている風景が何かを知ると、たいていの子どもたちは、外に飛び出して節穴をのぞきこんだり、雨戸の前に立って中にいるほかの子どもたちに自分がどんな風に映っているか、確認せずにはいられないようだ。『ガリバーの目』同様、この作品も年齢を問わず「男の子ごころ」のストライクゾーンのようで、島のおじいさんたちも「おもしろいねぇ、あれは!」と笑顔で語る。 弘法巡りで出会う佐久島の歴史、信仰、自然。 現象の家から、迷路のような路地を抜けて、島民から「一号線」とよばれる島の東西を結ぶメイン・ストリートに出ると、「大山弘法みち」という手づくりの矢印看板が見つかるだろう。畑のあぜ道を通って、今度は山の中へ入っていく。6つめのスタンプ・ポイント『大山弘法みち』を目指せば、「ああ、これが佐久島の弘法さんなのか!」と、思わず微笑んでしまうようなかわいらしいレンガづくりの小さな祠が見つかるはずだ。祠はコンクリート製だったり、中には家電製品の廃品を利用したものもあるので、それを見ていくのも楽しいだろう。静かな山の中を歩いていると、ここが島だということを忘れてしまう。 7つめのスタンプ・ポイント『秋葉山弘法みち』は、急な山道を登ったところにある。山頂には、「秋葉山古墳」と、「秋葉神社」があり、秋葉神社を取り囲む石垣は、どことなく謎めいていて、ミステリースポットの趣きがある。子どもたちには、ちょっとしたどきどき感が味わえるだろう。秋葉山をルート沿いに下ると、そこは入ヶ浦の港。ふたたび海の見える景色が開けると、なんとなく開放感がある。 入ヶ浦から看板をたよりに、今度は『富士山弘法みち』へ。8つめのスタンプ・ポイントは、また急な山道をのぼり、木立の中を進む。富士山の浅間神社のなんともいえないいい雰囲気の鳥居の脇で、スタンプを押すと、もうゴールは目の前。 『富士山弘法みち』から東地区へと山道を下っていくと、今度は東港が眼下に見えてくる。集落に入るとすぐに9つ目のスタンプ・ポイント『阿弥陀寺』がある。ここには、年を取って山中の弘法さんをお参りできなくなった人や、島を離れて弘法さんを管理できなくなった人、あるいは管理者の絶えた家の、たくさんの弘法さんが集められた大師堂がある。過疎と高齢化の影響は、島民がとても大切にしている信仰の場にもあらわれているのだ。 さて、海あり山あり、古い路地ありの『弘法巡り+アート・ピクニック』も、最後のスタンプ・ポイント、東渡船場に到着。約4キロ。およそ3時間ほどの道のりだった。アート・ピクニック初日、2日目はここにテントを張ってボランティアが受付や案内をしてくれたが、現在は、東渡船場の待合室内に地図やスタンプが設置されている。 『弘法巡り+アート・ピクニック』を通して、気付くこと――佐久島の楽しみは「誰かに与えられるものではなく、自分で見つけるもの」、ということ。それは、とても、アートと似ている。 【関連情報】 ● 弘法巡り+アート・ピクニック2003 ● キッズ・サポーター リポート 【同時開催】 ● 『木村崇人展 佐久島で地球と遊ぶ』 |
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■ 2003年度全記録へ ■ TO HOME ■主催: 幡豆郡一色町 ■共催: 一色町大字佐久島・島を美しくつくる会 ■企画・制作: 有限会社オフィス・マッチング・モウル |
季節の花が美しいルート内には、手作りの案内看板がある。 |
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