三河・佐久島アートプラン21 佐久島体験2007 祭りとアートに出会う島 平田五郎展 『佐久島空家計画5/大葉邸』
制作リポート 3
2007年8月24日〜28日
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8月24日(金)
9日間、土間の養生と平田さんが戸棚に設置するガラス作品制作のために中休み。明けて本日からレジデンス後期スタート。予定は27日までなのだが、その通りにいくだろうか? 現時点では不明。本日の参加者全員が11時40分の渡船に乗船。平田さん、そして今日から初参加の東京からの学生ふたりもがんばって早起きして来た。人数が少ないことを知った横山君が日帰りで駆けつけてくれた。作業がわかっている人がいるのが心強い。ホントに感謝! この日の作業は、このプロジェクトの最初の年、2002年に手がけた庭に敷いた石が大分痛んでいるため、崩れた石を撤去して、中休みの前に集めておいた石を差し替える補修作業が中心。今日はその中でも溝部分を集中的に補修。東京から早起きしてやってきた理科大チームも昼食後はいきなり作業。黒目さんは、平田さんの指示で透明ガラスを研磨剤で磨いて磨りガラスにする、という職人的作業に没頭。溝部分の補修はこの日のうちに完成。大葉邸2年に制作した漆喰の白い部屋の入口のアクリル板も痛んでいるので、この際、ガラスに差し替えることに決定。本土側のガラス屋さんに相談し、明日ガラスを入れる杉の戸板を渡船で本土側へ送ることを連絡。横山君はアルバイトがあると、最終便ギリギリまで作業して帰還。みんな、お疲れ様でした。 ■ボランティア 4名/大浦万季・西村祥子(東京理科大学)、横山将基、黒目利江 8月25日(土) 朝からトラブル続出。平田さんが自宅から発送した特殊なガラスが真ん中でパリンとみごとに真っ二つ。平田さん→運送会社への怒り。内藤→平田さんへの怒り。かみあわない怒りの矛先。さらに、本日ガラスを入れてもらう板戸を渡船場まで運んで行ったところ、ガラス屋さんから携帯電話へ連絡があり、そこでは加工が出来ないことが発覚。増大する疲労感。どうする私? どうする? ガラス屋さん曰く、島在住の家具作家の野田さんに相談してみたら? というので、車に板戸を積んで野田さん宅へ直行。有難いことに野田さんが加工してくれることになり、必要なガラスの寸法を測りガラス屋さんに発注。翌朝には届くとのことでとにかくやれやれ。野田さんが大葉邸で加工作業をしてくれることになった。 木製の枠にガラスを入れるのは、ガラス屋さんじゃなくて建具屋さんであることを生まれて初めて知る私たち。建具屋さんじゃないけど、家具作家が佐久島にいてくれた運命に感謝。トラブル続きで朝からドタバタであったが、午前中から名城大の3人がまたまた日帰りで助っ人に来てくれていたので、男子二人に配線作業を任せ、大葉邸の作業自体は順調に進む。午後からはさらに6名がやってくるのだ。期待は高まったものの、作業経験ゼロの文科系女子グループは、佐久島的には「軽作業」なのにものすごい重労働をさせたみたいにすぐに疲れてしまった。う〜ん、困ったぞ。 後で教育大学院生の黒目さんから「今の子どもたちや若者がいかに昔の人(平田さんや私みたいな20年前の人たち)と比べて体力がないかということが問題になっている」という教育現場の現状を聞く。「たぶん、今の20歳くらいの平均的な若者は、平田さんたちの疲れている時の体力が普通の時の体力なんですよ。いろんなことができないのは、基本的な体力がないからだと思います」と鋭く冷静な分析を呆然と聞くおじさんとおばさんなのであった。なるほどね〜。でも思い当たることがある。以前、おひるねハウスが台風に襲われ、天文学的な数のムール貝と流木に海岸が埋め尽くされた片付け作業の時、最初にバテたのは南川&内藤だった。70歳を越えた島の老人たちは、まったくバテてなかったことを思い出した。こうして人間は退化していくのね。日本人ってどうなっちゃうのかな? ■ボランティア 12名/佐野百合子・榛葉玲・有賀奈津美・中鉢理沙・佐藤彩花・高橋みゆき(静岡文化芸術大学)、大浦万季、西村祥子、小林淳、森川祐喜、山本枝実、黒目利江 8月26日(日) 割れたガラスは特殊なものなので注文しても1週間かかるということで、展覧会オープン前日の9月7日に設置することに決定。ガラスは保険に入っていたので運送会社に電話。中部のサービスセンターに電話するも、ややたらい回し気味に他のセンターへ回され、結局平田さんが発送した茨城のサービスセンターと交渉することに。ものすごい茨城弁の担当者さんがとても親切に対応してくれた。とりあえず指示通りガラスが割れた証拠写真をデジカメで撮影しておく。 午後から家具作家の野田さんがやってきて、板戸にガラスを入れてくれた。さらに平田さんが困っていた家具の開閉具合も直してくれる。後光がさして見えるのでありました。この日は文化芸術大学チームを室内大掃除に起用。少人数に分けた方が作業効率がずっといいことが発覚。前日に比べたらずいぶんよくやってくれた。慣れてきたのかな? その調子でがんばってください。作業は結構遅くまで続き、みんなフラフラなのだが、平田さんは宿舎にガラス作品を持ち帰りさらに制作を続ける。平均睡眠時間は3時間くらいの平田五郎は本当にタフなのであった。まだまだ若いモンには負けない? ■ボランティア 9名/佐野百合子、榛葉玲、有賀奈津美、中鉢理沙、佐藤彩花、高橋みゆき、大浦万季、西村祥子、黒目利江 8月27日(月) 予定では最終日だけど、本当に作業が終わるとは思えない。しかし、平田さんの提案で希望者は1時間早く起きて自由時間ということになる。平田さん、黒目さん、西村さん、大浦さんの4人は島の高校生と海へ遊びに行った。文化芸術大学チームは、まだ佐久島のアート作品を見ていないので、内藤が車でぐるっと島内案内。通常通り8時頃から大葉邸で作業。黒目さんは弁天サロンで障子張り。その間、とにかく使わなくなった材料や工具の片付けと大掃除で大わらわ。平田さんはガラスの作品を戸棚に取り付け作業。今日も野田さんが来てくれている。バタバタと片付けは進み、文化芸術大学チームは最終便で帰って行った。結構厳しくしてしまったが、渡船場まで送って行ったら楽しそうに写真を撮ったり、ニコニコして「また来まぁす」とか言っている。かわいいなぁ。 夕方、マッチングモウル内藤が弁天サロンの相川さんに手伝ってもらって貼った障子のはみ出した部分をカッターで切りそろえる作業を続けていると黒目さんから暗い声で携帯に電話が入る。「ガラス作品が倒れて割れました。オープニングに間に合わないかも、って平田さんが言ってます」。がくっ。首が折れた。大葉邸5期目の制作中、最大の危機がよりによって最終日に訪れた。この時点ですでに平田さん、黒目さん、内藤は1日延長して作業を続けることが決定していたのと、有事の時は妙に平静になる性格が幸いして、焦ることもなく大葉邸へ。平田さんはすでに諦めの境地で、力なく作品の割れた部分をはずしていた。ボランティアのひとりが焦りまくって恐縮している。犯人は君かい? 割れたというガラス作品は予想とは違い粉々になっているわけではなかった。一面が割れたが、その部分は上手くはずすことができたのである。「あの運送の不備で割れたガラス、もしかして部分的に使えるんじゃないの?」ということになり、割れた原因を作ったと思い込んでいるボランティアが弁天サロンへ飛んで行って採寸して飛んで帰り、充分使えることを報告。ガラス磨き職人黒目さんが「わかりました。今晩私が磨きましょう。そして明日それを取り付けて戸棚を完成させて帰りましょう」ということに。なんて頼もしいのっ。 その後、せっかくガラスを宿に持ち帰ったのに研磨剤がどこかに紛れ込んで見つからないという、意味不明の事態が巻き起こり、すでに夜遅かったが黒目さんは「大葉邸に探しに行きたい」と言い出す。じゃあ、もう一度だけ合宿所の倉庫を探して見たら、と提案すると「もう探した(by 平田五郎)」。探せよおらおらおら! と倉庫へ行くと、黒目さんがあっさり発見し、台所でガラスを磨きだすのでした。眠れぬ夜はさらに続くだ。残すところあと一日。 ■ボランティア 9名/佐野百合子、榛葉玲、有賀奈津美、中鉢理沙、佐藤彩花、高橋みゆき、大浦万季、西村祥子、黒目利江 8月28日(火) 通常通り朝8時から大葉邸で作業スタート。平田さんは棚に作品設置。黒目さん、内藤はできる限りの片付け作業。ここ数日記録写真を撮っている余裕もほとんどナシ。とにかく最終便ギリギリまで作業を続けてバタバタと島を離れる。後は7日に最終チェック。今回は多岐に渡る作業で、平田さんもかなり疲れたみたいです。本当にお疲れさまでした。新たな作品と大掛かりな補修によって、大葉邸は生まれ変わり、自信を持ってみなさまに見ていただける作品になりました。9月8日(土)の展覧会初日には平田さん自身による作品解説と、平田さんを囲んでささやかな交流会を開催します。どうぞお気軽にお越しください。そして、進化を続ける大葉邸にぜひ訪れてみてください。 ■ボランティア 1名/黒目利江 制作リポート2ヘ 【関連情報】 ● 平田五郎 アーティスト・イン・レジデンス 2007 ● 平田五郎展 『佐久島空家計画5/大葉邸』 ● 『佐久島空家計画5/大葉邸』 制作リポート1 ● 『佐久島空家計画5/大葉邸』 制作リポート2 ● 『佐久島空家計画5/大葉邸』 写真リポート 【同時期開催】 ● 佐久島アート・ピクニック 2007 ● となりのおみせ プロジェクト 2007 |
24日。いよいよ後期制作スタート。東京理科大チームと駆けつけてくれた横山君が庭の補修作業をおこなう 黒目さん、職人化する 土間をはじめ、全体の大掃除開始 男子は配線作業を担当です 戸棚の引き出しを加工する平田さん 文化芸術大チームは庭の補修作業 26日。作業前の平田さん憩いの時間 27日。早起きして海で遊ぶチーム 大葉邸の障子を弁天サロンの相川さんの指導で貼り直す黒目さん 27日。宿舎で晩御飯。やはり予備日に一日ずれこんで明日も作業 島の人にいただいたタコを平田さんが料理 |
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■ 2007年度全記録 ■ TO HOME ■主催: 幡豆郡一色町 ■共催: 一色町大字佐久島・島を美しくつくる会 ■企画・制作: 有限会社オフィス・マッチング・モウル |
制作途中のガラスの作品。磨りガラスが美しい |
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