三河・佐久島アートプラン21 佐久島体験2008 祭りとアートに出会う島 学生チャレンジ企画
『すわるとこプロジェクト』 制作リポート1
前期制作・基礎工事の部/2008年4月20日〜24日
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事前準備期間
本プロジェクトの事前準備期間がどれだけあったのか……。半年あったと言えばいえるし、2週間しかなかったともいえる。なぜなら、学生たちが何度もリサーチと称して島を訪れた挙句に、準備期間ギリギリに出してきたプランのほとんどを、私内藤が却下したためである。材料を発注しなければならないタイムリミットまで、図面の書き直しは続けられた。 問題は4ヶ所ある設置場所のプランが、どれもこれも似たりよったりだったこと。規模も、デザインも単調でインパクトがなかった。それら「いかにも流行りの建築のエッセンスがちりばめられたコンセプトに芯のないデザイン」は、参加メンバーが「みんなで話し合って」出てきたプランらしい。アートに民主主義なんてないのだよ、君たち。そこには、ただ「良いプランと良くないプラン」があるだけなのだ。 ということで、みんなの話し合いの過程でボツになったプランを吐き出させると、結構面白い図面がいくつも出てきた。「なんでこれを選ばないかなぁ? これにします。これ、決定!」。真夜中に行われた嵐のようなやりとりの末、『すわるとこプロジェクト』の最終プランは決まった。それからの1週間、図面の作成、材料の発注という現実的な準備作業を大慌てで済ませた学生たちは、ついに佐久島での設置作業に突入していった。島での現場監督は、オフィスマッチングモウルの新人アシスタント黒目にゆだねた。普段の制作時に厳しくも的確に導いてくれるアーティストはいない。役所や島民の間をかけまわって後方支援に回る私もいない。さあ、産みの苦しみ味わいたまへ! 若者たちよ(含む黒目)。 (ここまで文責 : オフィスマッチングモウル 内藤美和) 4月19日(土) 制作前夜 「すわるとこプロジェクト」スタート前夜、企画を担当しているオフィスマッチングモウルの内藤と私、黒目は日中に開催された「おひるねハウスメンテナンス&レクチャー」から引き続き島に残り、明日から始まる作業の事前準備を始めた。これまで何度も学生たちと打ち合わせはしていたものの、かなり不安の残る状況。 真夜中近くに、相談にのってもらっている島の大工さんと道具などの確認作業。その過程でいくつか疑問な点があり、学生と電話連絡を取り合うと「水平ってどうやって出すんですか?」という能天気で衝撃的な一言が! この日、私黒目は日付が変わるまで、翌日学生に教えるために大工さんから機材を使ったレベル出しのレクチャーを受けた。泣きたくなる気持ちを抑えつつ「やるしかない,がんばろう!」と就寝。 4月20日(日) 晴れ 朝8時、佐久島東港。天気だけは良好。この日から現場での制作が始まる。全然準備ができていないという状況が理解できていない学生たちが渡船からほがらかに降りてくるのを遠目に見ながら、内藤が仁王立ちになり「ふふふっ。学生諸君、地獄の佐久島へようこそ。さあどうしてくれよう……」とつぶやく隣で、私は不安な気持ちでいっぱいだった。 始発便で佐久島入りした学生は4人。彼らと同じ船でやってきた一色町役場佐久島振興室の鈴木さんとともに、全員で島内4ヶ所の設置現場へ向かう。設置するベンチの大きさにヒモを張って写真を撮っている時に、鈴木さんからフラワーロードに設置するベンチの基礎工事について厳しい指摘を受け、それについて、誰も何も考えていなかったことが判明し、学生たちも私もパニック状態。それなのに「ま、後は若い者同志がんばりたまえ」という言葉を残し、内藤・鈴木両オトナは私と学生4人を島に置き去りにして行ってしまった。 頭をぐるぐるさせながらもとにかく作業開始。最初に大浦海水浴場・カモメの駐車場前の設置現場で水平計測スタート。学生たちも、ようやく自分たちの置かれた状況に気付いたのか、心細そうな表情になる。不安なのはこっちも一緒じゃい!! と心の中で叫んでみた。 遅めの昼食を挟んで、佐久島の北側の高千谷の海岸沿いの一番小さなベンチの水平計測をし、基礎工事にとりかかった。夕方から上陸した3年生の黒島君を加え、夜10時頃までかかったものの、やっとひとつ基礎工事を終えることができた。慣れない現場の上、島の強烈なヤブ蚊攻撃にもめげずどうにか一日目を終える。とんでもない現場を任されてしまったと思いつつ「なせば成る。なさせて見せます!」自分に言い聞かせて就寝。 ■参加学生5名/水谷綾子、水谷知宏、森川祐喜、横山将基、黒島和馬 4月21日(月) 晴れ 作業2日目。朝食は6時から。早朝から海岸で材料の石集め。フラワーロード沿いのベンチは、他の三ヶ所と違って道路の高さまで土台をかさ上げしなければならず、そのための石集めなのである。 午前中は大浦海水浴場で基礎工事のための穴掘り。相変わらず地盤の状態は良くないわ、必要なコンクリートブロックもそろってないわで基礎工事は終わらない。全然工程が進んでいる感じがしない。焦る。 午後から学生1人を加え、フラワーロード沿いの基礎工事再開。石を積み、土を詰め、セメントと砂をフネに入れ、クワで混ぜ水を入れモルタルを練って基礎を打つ。去年大葉邸のボランティアでつちかったクワさばき! 横山・森川のゴールデンコンビ再び! とばかりに作業はちょっとだけ順調。大葉邸に比べたらこれしきの事……、と過去の過酷な体験を思い出し、自らを奮い立たせてみる。 軽トラックと発電機のライトで作業場を照らして真夜中まで作業。島中が寝静まったような静けさの中、相等怪しい私たちだ。そこまでしても結局フラワーロードの基礎工事は終わらない(涙)。合宿所に戻るとすでに深夜1時過ぎ。学生たちから明日の作業手順を聞いた私は、こんな調子では遅れを取り戻すことは無理と判断。学生たちに段取りの悪さを指摘し、しゅんとさせた所で朝4時朝食を提案してみる。学生たちに作業に専念させるため、私はいつも1時間早く起きて朝食の支度をしているので、自らは午前3時起床を覚悟。 明日の朝9時に台船で資材が到着する前に、フラワーロードの基礎を完成させよう! 眠くても疲れていてもやるしかない! ランニング・ハイみたいになってきたかも。 ■参加学生 6名/水谷綾子、水谷知宏、森川祐喜、横山将基、黒島和馬、小林千絵 4月22日(火) 晴れ 昨日の言葉が効いたのか、学生たちはまだ暗い中しっかり起きだしてきて4時に朝食を済ませた。ここで遅れを取り戻さなければ後がないと必死な感じが伝わってくる。よしよし。 2006年松岡徹の「佐久島のお庭」が初めてのボランティア参加であった私にとって、ベンチの基礎工事はその時の小道づくりと同じ工程。どんな経験も無駄にはならない。土木作業の経験者として学生にやり方を説明しつつ私自身も作業に参加。台船が到着する前に見事フラワーロードの基礎が完成した。やった!! ちなみに、台船というのはカーフェリーのない佐久島に車や大量の資材を運び込むために時々出る巨大な桟橋みたいなものだ。文字通り大きな台に何台もの車や荷物が積み込まれて、馬力のある船がそれを引っ張ってくる。今回の台船は月に1度の町の粗大ゴミ、資源ゴミの収集のために出されたもので、行きは空っぽで来て、帰りにはゴミを満載して戻るのである。今回は、その空の台船でベンチの材料となる大量の部材、残りのコンクリートブロック、その他必要な材料が運び込まれてくるのだ。 ゴミ収集作業に邪魔にならないよう、急いで台船から荷物を下ろした後、大浦海水浴場で再び基礎工事に取り掛かる。早朝からの重労働で疲労はピークに達し、ついに最初の犠牲者・黒島君がダウン。 でも全体的な作業効率は確実に上がっていて、午後には海水浴場の基礎がなんとか完成した! 今度は部材塗装班とキャンプセンター跡地での水平計測班に分かれて作業を続ける。夕日が無情にも沈んでいく。海水浴場の現場で作業中、不思議な虹を見つけ、ひと時心を和ませた。 途中、野外で部材の塗装をしながら、明日から天気が悪くなることに気付いた私は、雨でも作業できる場所はないかと悩み始めた。でも朝3時起きの頭では、どうしていいかわかるはずもなく島の大工さんに半泣き状態で電話する私。忙しい中駆けつけてくれた大工さんが、観光協会の会長さんに電話をかけて海水浴場管理棟のピロティーを借りることができ瞬く間に問題を解決した。延長コードも貸してもらえた上に電気も使わせてもらえることになり、差し入れのジュースまでいただいてしまった。「すみません」と下げた頭が上がらない状況。「こういうときは、すみませんじゃないだろう?」と言われ「ありがとうございます!」と感謝し通し。 この日は夜10時に遅い夕飯を食べた後、学生たちはさらに作業を続けることに。彼らは2時半頃に就寝したとかしないとか……。 ■参加学生 7名/水谷綾子、水谷知宏、森川祐喜、横山将基、黒島和馬、小林千絵、早川雄大 4月23日(水) くもり いつも通り早朝4時半に朝食の準備をするも、さすがに誰も起きて来ず。起こしに行くとしっかり者の水谷さんが一番に起き上がってきたので、昨日深夜に及んだ作業状況を聞く。 結局朝ごはんは5時40分から。食事をしながら作業状況の確認をすると、水谷さんの話とかみあわない。どうやら彼女、半分眠りながら話をしていたようだ。 7時前には作業開始。前日深夜までかかってほぼすべての部材に一層目の塗装を終えてあったのもあり、学生5人全員をキャンプセンター跡地の基礎制作に行かせて、10時に島にやってくる大学院生3人を待ちつつ私はひとり黙々と塗装作業。院生たちは到着すると即座に状況を理解して、スムーズに作業をはじめてくれた。さすがだ。その上、「後輩たちが本当にお世話になります」とお茶の差し入れまで! 私は癒されました。 この日はキャンプセンター跡地の基礎工事を夕方暗くなる前に完成させ、塗装も二層目まで終わらせ、片付けも含め9時に合宿所に戻る。 予定していた部材の準備はできなかったものの、4か所すべての基礎打ちが完了した。制作前夜のことを思うとここまでできたことが奇跡のようだ。本当によかったと思いつつ、まだ見ぬベンチに思いをはせるのであった。 ■参加学生 8名/水谷綾子、森川祐喜、横山将基、小林千絵、早川雄大、鈴木里佳、小林裕紀、糟谷豪志 4月24日(木) くもりのち雨 この日は、前半日程最終日。いつもより遅く8時に朝食。後半制作に向けての現場チェックをする。12時の渡船で島を出るため昼ごはんの用意をしていないことを知った弁天サロンの管理人・相川さんが、アサリのお味噌汁を作ってくれて、その上ごはん、スナックエンドウ、たまねぎサラダ、漬物まで用意してくださった。おかげでみんなの心もお腹も満たされた。 島を出る頃にはすっかり雨。島の人たちへの感謝の気持ちを抱えつつ帰りの船に乗った。「みんなの優しさに応えなければ!」と学生たちも私も気持ちを新たにするのであった。早速後半制作の準備のために大学に戻って計画を立てるという学生。しっかり段取り考えてくれることを願いつつ、嵐のように前半日程は終了した。 ■参加学生 8名/水谷綾子、森川祐喜、横山将基、小林千絵、早川雄大、鈴木里佳、小林裕紀、糟谷豪志 制作リポート 2ヘ 【関連情報】 ● 『すわるとこプロジェクト』 開催のお知らせ ● 『すわるとこプロジェクト』 制作リポート2 ● 『すわるとこプロジェクト』 写真リポート 【同時期開催】 ● 佐久島アート・ピクニック 2008 |
事前準備期間 最初に出してきたプランのほとんどをボツにされた後、企画担当者のオフィスでプランを練り直す学生たち 1日目 海水浴場航空写真。赤印が設置場所。佐久島は三河湾国定公園内にあるためプランは事前に役所に提出して許可をもらう 海水浴場で最終的な位置決めをし、印をつける学生たち。これも役所担当者が立ち会って確認作業 作業している目の前の海。美しい 午後から高千谷現場で地ならし。ここの作品はいちばん小さい。まず小規模から練習を兼ねて挑戦してみよう 地ならしの後水平計測スタート! 2日目 6時朝食。みんなまだ眠そうだが翌日からは4時起きとなる 早朝から基礎に使う石を海岸で集める。遠くにおひるねハウスが見える セメント作りは大葉邸で経験済。慣れた感じの横山・森川ペア 朝拾ってきた石を積み上げてセメントでかためて基礎工事をすすめる なんだか基礎らしくなってきた 3日目 海水浴場での基礎工事スタート。高千谷やフラワーロードよりも複雑 基礎作業の隣で部材にひたすらペンキを塗り続ける塗装班 写真左側の大きな光が夕日。真ん中の光が不思議な虹 4日目 塗装は海水浴場管理棟ピロティに作業場を移動。部材を並べてひたすら塗り続ける 合宿所で昼食。参加人数が増えてきたので、食事場所もキッチンテーブルから別の広い部屋へ移動した 強い日差しを避けるため、屋外作業担当学生は農帽着用。似合うね 休憩中、猫が何匹も遊びに来た。癒される……。 5日目 前日の雨で現場が水浸しとなった海水浴場の基礎部分。 前半日程最終日なので、後半に備えて塗装済みの部材を一ヶ所にまとめておく。後半はこれをすべて組み立てるのだ! 完成したフラワーロードの基礎部分。水はけも考えて溝を切った。というのも大工さんからの有難いアドバイス 後半戦に備えて養生をしておく 基礎としてはいちばん複雑だったキャンプセンター跡地のもの。複雑だったけれど、だいぶ作業に慣れてきたのでなんとか無事完成できた 高千谷の基礎。雨も降り出し、風も強く4月下旬なのに寒いくらい。後半に向けて細かいチェックをおこなう |
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■ 2008年度 全記録 ■ TO HOME ■主催: 幡豆郡一色町 ■共催: 一色町大字佐久島・島を美しくつくる会 ■企画・制作: 有限会社オフィス・マッチング・モウル |
連日真夜中近くまで続く作業。電源のない場所では発電機でライトアップ |
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