三河・佐久島アートプラン21
佐久島体験2001 祭りとアートに出会う島
 
弁天祭り・リポート
8月14日(火)

『筒島インスタレーション』で竹林が姿を変えた

午前11時30分。弁天サロンに、弁天祭りをサポートするボランティアが集結した。名古屋芸術大学、名古屋造形大学の学生、そして地元企業のボランティア組織「デンソー・ハートフルクラブ」のメンバーなど、19歳から59歳までの総勢30名。ボランティア経験豊富な者、初体験の者とさまざまだった。
 
自己紹介と午後からの作業の説明の後、先に佐久島入りしていた食事班のボランティアが作った昼食を済ませ、軽トラックで弁財天堂のある筒島へ向かう。筒島弁財天堂裏の竹林には、ぐるりと一周できる遊歩道がある。この遊歩道の中に、竹を使ったさまざまな作品を設置するのが「筒島インスタレーション」だ。アーティスト松岡徹の指導で、作業を開始。猛暑の中、竹林の中で、全員汗だくで午後5時まで作業を続けた。
 
夕食後は、大浦海水浴場で開催された東の盆踊りに参加。宿泊は佐久島キャンプセンター宿泊棟の大広間に、布団を並べて修学旅行のように眠る。
 
8月15日(水)

『盆踊りと提灯行列』。島の夏は、こんなに古くて新しい

 朝8時半から、前日に引き続き筒島での作業。インスタレーションには「かごめの道」「とおりゃんせの道」「のぞみやぐら」「暗がりの道」などの名前が付けられる。竹のトンネルをくぐりぬけたり、海をのぞむ見晴らし台で休んだり、竹でつくられた楽器で遊んだり――楽しい仕掛けが完成した。参道の入り口に手製の旗を立て、境内を掃除して翌日の弁財天祭典にそなえる。午後の自由時間に、学生たちは海水浴で佐久島の夏を満喫していたようだ。
 
午後6時半。提灯行列のスタート地点となる大浦海水浴場に集合。提灯は、前の週に、松岡徹の指導で、ボランティアと島民が制作したもの。佐久島で捨てられたペットボトルを加工した手作り提灯だ。島民、お盆の帰省客、観光客100名が、明かりの灯った提灯を手に、大浦海水浴場から盆踊りのおこなわれる崇運寺までの2キロ余りを歩いた。 佐久島は東西ふたつの地区に集落が分かれている。東西の中間地点には人家がなく、畑などがあるばかりだ。観光施設が集中し、住民も多い東地区から盆踊りのある西地区へ、たくさんの人たちを一度に移動させる手段はなく、真夏の夕暮れ時に2キロの道のりを歩いてもらうしかない。でも、どうせ歩くならば、楽しく歩こうと考えたのが、この提灯行列だ。
 
100もの提灯が、真っ暗な島の一本道を進む光景は、疲れも吹き飛ぶ美しさだと参加者に好評だった。また、普段は観光客もほとんど訪れない静かな西地区が、提灯行列の人並みでにわかに活気づいたことで、住民にも喜んでもらえた。提灯行列が西地区に入ると、崇運寺からの太鼓の音が近づいてきた。西港を見下ろす高台に建つ崇運寺の境内には、飲みものや、金魚すくい、風船釣りの屋台が並び、浴衣姿のボランティアたちが手伝った。過疎と高齢化の進んだ島ではほとんどみかけない若い娘さんたちの姿は、少しだけ祭りに花を添えたようである。
 
西の盆踊りは江戸時代はじめの古いかたちを残した伝統的なもの。太鼓と笛の音に合わせて、選ばれた継承者の唄う「鈴木主水 口説き節」は、1曲が小一時間も続く。スタッフ、ボランティアも、唄に合わせ、島民の踊りを見よう見まねで盆踊りに参加。単調だが、哀愁のある節回しと、老人たちのかなでる笛や太鼓の音が、静かな夜の海に響く。それは、とても美しい、そして懐かしい光景だった。
 
盆踊りの後、西港では精霊流しがおこなわれた。島に自生する萱を束ねた船に、線香やろうそくが灯され、静かに入り江から沖へ向かうのを見送りながら、お盆の夜はふけていった。
 
 
 
 
 
8月16日(木)

『弁財天祭典』で血沸き肉踊る佐久島太鼓を体験

弁財天祭典当日。朝8時半、東港に集合。島民といっしょにお祭りの準備作業。弁財天堂の境内では、飲み物の販売、筒島インスタレーションの案内地図の配布、竹林の中にある奥の院前では、佐久島で採れた天草でつくったところてんを配るためボランティアが活躍した。
 
午前10時頃から、佐久島太鼓の打ち込みが始まる。この数年、弁財天祭典での太鼓の打ち込みは、過疎化と高齢化による打ち手の不足のため取りやめになっていた。しかし、島の活性化のために活動する有志「島を美しくつくる会」の熱意によって弁財天祭典の佐久島太鼓は復活した。彼ら「島を美しくつくる会」のメンバーは、年間を通じておこなわれるアートによる地域活性化事業でも、多忙な仕事の合間をぬって、プロジェクトの実現に奔走している。
 
数年振りの筒島に響く太鼓の音に惹かれてか、10時を過ぎると続々と弁財天堂に人が集まってきた。にぎやかさは、祭りの終了する正午まで続き、その間、筒島インスタレーションを訪れた人は422人。当日、弁財天堂を訪れた人数は、のべ500人にのぼった。これは例年の4〜5倍の人数らしく、屋台のジュースや、奉賛会が用意したお守り、お札も売り切れるほどの人出だった。
 
訪れた子どもたちに大人気の筒島インスタレーション。竹でつくった楽器を、大人も子どもも夢中で叩いていた。「竹林がきれいになった」「(作品があるだけで)あんなに変 わるものかね」、何人もの島の人に声をかけられた。祭りが終わって、奉賛会の会長さんがボランティアにお礼をいってくださった。「こちらこそありがとうございました」元気なボランティアの声が、夏の空に響いた。筒島インスタレーションは、好評につき、引き続き公開中です。
 
 
【関連情報】
 弁天祭り
 弁天祭りとは?
 同時期開催 『弁天奉納三人展』

ぞくぞくと筒島入りするボランティア
 
 

潮風に吹かれて祭りの旗を立てる
 
 

作業は大変だけど笑顔がいっぱい
 
 

流木を使った看板も手づくり

『のぞみやぐら』の基礎をつくってくれたのは、島の大工、三宅さん
 
 

『かごめの道』では、生えたままの竹を使った
 

『暗がりの道』には、松岡徹のあかりの作品が
 

提灯行列の出発を待つ母子
 

暮れゆく島の道を100の提灯がすすむ
 
 
 
 
 

差し入れのかき氷で一服するボランティア
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

『とおりゃんせの道』では大人も子どももとおりゃんせ
 

海を見晴らす場所ある『のぞみやぐら』で語らう恋人たち(?)
 
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■主催・問い合わせ先: 幡豆郡一色町
■共催: 一色町大字佐久島・島を美しくつくる会
■企画・制作: 有限会社オフィス・マッチング・モウル

荒れた筒島竹林が、ボランティアたちの手で美しくよみがえった
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