三河・佐久島アートプラン21
佐久島体験2015 祭りとアートに出会う島
松岡徹『ひだまり庵』
写真リポート2
天井、梁、柱、ベンチ、テーブルと椅子。全て鮮やかなモザイクタイルで覆われた「ひだまり庵」
青を基調にしたカラーリングで海の中にいるような心持ちになれます。
「ひだまり庵」を入口から見た景色。なにやら楽しげな造形物が出迎えてくれますよ。
テーブルの脚に見えるのは赤いお魚。床には浜辺で拾った小石で模様が描かれています。
テーブルの上ににゅっと顔を出すのはおなじみ海神さま。テーブル上の模様は佐久島ですよ。
膝を抱えた海神さま一族の者といっしょに、ベンチに腰掛けてのんびりした時間を過ごしてね。
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古い東屋をアートでリノベーション
ならだかな丘の上に伸びる飛び石の小径が行き着く先に「ひだまり庵」がある。元は背後の森からの落ち葉が降り積もり、斜面から崩れ落ちた土砂が押し寄せるじめじめした日陰の古ぼけた擬木の東屋だった。松岡はまずL字型のベンチの背後に低い壁を作ることで森と東屋の境界とし、東屋のうち内部を外部と分かち、独立した空間を作り上げた。
そして元からある天井、梁、柱、ベンチ、テーブルと椅子はそのまま残し、表面のすべてをモザイクタイルで覆った。ペインターでもある松岡らしく、モザイクタイルという絵の具で東屋の内側全てに絵を描いていったのだ。
使われたモザイクタイルは青を基調としている。座っているベンチや、見上げる天井で空間は青く染まり、海の底にいるような、けれどどこか懐かしい昭和の時代の銭湯に浸かっているような、なんとも言えない心持ちになる。ベンチの背や柱やテーブルの脚に泳いでいる赤い魚を見つけるのも楽しい。
L字型のベンチの中央には、幾度も松岡が作品化してきた佐久島オリジナルのキャラクターである「海神さま」が膝を抱えて座っている。元は板状のコンクリートの平らな座面は他と同じようにモザイクタイルで覆われ、すべての角に丸みが付けられてタイルの冷たさを和らげている。座ってみると実に心地よい。海神さまと過ごす時間も格別だ。
丸テーブルの上にはまたしても「海神さま」がぬっと顔を突き出している。海神さまを取り囲むようにテーブル表面には緑色のタイルで佐久島の形が描かれている。気付く人はいるだろうか? テーブルをとりまく4つの椅子の鮮やかな黄色が、静かな空間にひときわ印象深い。ここにもきっと座りたくはずだ。
タイルで覆われた東屋の内部空間の中で、床だけはコンクリートで塗られている。その表面にひかえめに模様をつくり出しているのは、松岡が丹梨海岸で拾って来た小石。
モザイクタイルが続く中に静かにたたずむ海神さまのセメントの白と床の灰色が、タイルで彩られた鮮やかな空間を落ち着かせている。波に洗われていた石たちは、これから森の中で訪れる人たちの気配の中で時を刻んでいくのだ。
飛び石の小径によって、ひとつだったひだまりの広場の空間にいくつもの視点が生まれたように、東屋にしかけられたいくつかのかたち――それは海神さまであり、赤い魚であり、丹梨海岸の石が描く模様であり――を見つけることで、「ひだまり庵」はさらに魅力的な空間となった。
この森の中の小さな広場には、冬でも暖かな日差しが降り注ぐ。広場を囲む木々が壁となって、冷たい風をさえぎる特別な場所だ。訪ねて行こう。そこで交わす会話は、きっとおだやかで懐かしい記憶となる。
松岡徹による「ひだまりの広場」のリノベーションは始まったばかりだ。予定では今後2度の制作で空間はさらに変化して行くことになる。乞うご期待! が、まずは生まれたてのこの場所で、海神さまがみなさまのお越しをお待ちしております。
(文責:オフィスマッチングモウル 内藤美和)
改装前のひだまり庵