三河・佐久島アートプラン21 佐久島体験2004 祭りとアートに出会う島 平田五郎展 『佐久島空家計画4/大葉邸』
制作リポート 1
2004年8月10日〜19日
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事前作業 8月4日(水)
前年度に一度完成させていた室内の窓際の黒磨きの漆喰だったが、残念ながら“白化”してしまった。今年度は、もう一度挑戦することになり、前もって先発隊が苦労して作った部分の剥がし作業に当たった。いろいろ調べてみると、磨き漆喰は「素人が挑戦するにはあまりに高度な技術」であったことが発覚。今回は、レジデンス期間にプロの漆喰職人を招き、技術指導を受けながら完成させることになった。事前作業の後、技術指導に来てくれる職人さんから事前に指示書が来て、前もって下地だけをつくっておくことになった。こちらは、地元の若手職人さんにお願いし、レジデンスの開始を待つことになる。 ■ボランティア 1名/高木志瑞子(愛知県立芸術大学) 8月9日(月) 本格作業の開始を翌日に控え、材料などの運び込み、工具の設置などを前日におこなう。半日かけて準備。さぁ、明日から4度目の平田五郎によるアーティスト・イン・レジデンスがスタートだ。 ■ボランティア 1名/天野陽史(名古屋芸術大学) 8月10日(火) いよいよ佐久島空家計画第四弾がスタート。毎年2月に大葉邸のためのアーティスト・イン・レジデンスがおこなわれていたが、今年平田さんが「平成16年度五島記念文化賞・美術新人賞受賞」され、秋から一年間アラスカに滞在することが決まり、急遽、この時期に決まった。けれど、異例なのは時期だけではなかった。今年は、ものすごい台風の当たり年。とにかく上陸する台風の多さに、大葉邸に限らず他のアート・プロジェクトも振り回されることになったが、大葉邸は、入り口脇にある蔵の板壁が土台の土壁ごと部分崩落。道をふさいで通行の妨げになるような大騒ぎとなっていた。私たちが佐久島入りした時点で、すでに片付けが済んでいたが、このまま放置しておくと蔵自体が遠くない将来崩れてしまうという。大葉邸全体の景観を保つため、レジデンスの初日は蔵の板壁補修から作業が開始された。 もともと蔵に取り付けられていた板壁は、風とともにばらばらに去りぬ……、という状態。島の大工さんのご好意で、同時期に取り壊されることになった古い家の板壁をそっくりとって置いてもらった。昔の家は、本当によく考えてあって、家事の時、修理の時便利なように、壁ごとごそっと取り外しできるように出来ているのだ。というわけで、他の家の板壁を切ったり貼ったりして新たな壁を作ることになった。これまで佐久島に何度もボランティアで来ている学生に補修方法も含めて丸投げ。以前は丸鋸さえつかったことがなかった彼らは、ちょっとした大工さん状態で、自分たちで考えさくさく作業を進めてくれた。若者の成長を実感する瞬間である。 蔵の補修と並行して、まず平田五郎率いる「門の作業班(別名平田班)」が庭で作業を始める。これまで手付かずだった大葉邸の顔とも言える入り口の、崩壊寸前のボロボロの門もどきを撤去し、「作品としての門」を制作するのが今年のメインの作業だ。平田さんが描いた図面をもとに、門の「部品」を建具屋さんにつくってもらい、その組み立てと設置をおこなう。文章で書くとプラモデルの組み立てみたいに思われるかもしれないが、これが繊細にしてそうとう手のかかる作業なのだ。平田さんの支持にしたがって、慎重に作業は進められた。 蔵の修復班、平田班の他に、大葉邸全体のメンテナンスもおこなわれた。庭に面した建物の黒壁は、多分数十年もペンキを塗られないままの状態で相当にハゲハゲになっているので、補修をしながらのペンキ塗り作業をおこなった。夏休みでたまたま遊びに来ていた島の中学生も、大学生のお姉さんたちといっしょになって真夏の照りつける太陽のもと、お手伝いしてくれた。感謝感謝! ペンキを塗れば、見栄えだけでなく保護にもなるからね。これで大葉邸もまた少し寿命が延びたことだろう。三班に分かれて一日目の作業は順調に進む。なんだか今までにない順調さだ。やはりさまざまな技術が蓄積されているんだろうな。一日の終わりには、部分崩壊していた蔵の板壁も、補修作業がだいぶ進んだ。暑い中、みんな本当にお疲れさまでした。 ■ボランティア 9名/天野陽史、高木志瑞子、岡つばさ・杉本小百合・花井佐代子(愛知県立芸術大学)、天野太一(名古屋造形大学)、徳本佳英(西安造形大学)、広谷直子・仲谷陽子(東京都) 8月11日(水) 本格作業2日目。3班に分かれ、前日に引き続き作業を進める。蔵の板壁を担当している大工作業班には、インターネットで大葉邸のことを知ったという西安造形大学の徳本さんがボランティアとしては初参加。うら若き女性だが、工業高校出身ということで、工具は使える大工仕事もばっちりと、いきなり即戦力。これまで何度も佐久島のアート・プロジェクトに参加してくれている太一、陽史の天野兄弟も以前と比べるとかなり腕をあげ、こちらの支持がなくてもちゃんと自分たちで考えてたいていのことが出来るようになっている。 半年前は、平田さんとマッチングモウル内藤のふたりが、ぎゃあぎゃあ、がみがみ言わないとなんも出来なかったのに、「言われなかったのでやりませんでした」なんてぬかして、大人たちをかんかんにさせていたのに、まったく驚くべき成長振りに、目頭が熱くなる思い。結局この日は、前日にほとんど完成させていた蔵の板壁をみんなでペンキを塗り、見違えるようにきれいになった。素晴らしい若者たちである。 平田さん率いる門班は、門の材料を塗装した後、乾くのを待つ間、設置場所である門周辺の整備をおこなう。だいたい築100年以上経っているこのたてもの。当然、水平垂直なんてぜんぜん出てないわけで、組み立て後の門が上手く収まるようにするには、門のあちらを削り、こちらを足すなど、ややこしい作業が山積みとなった。平田さんが、佐久島での制作で右腕と頼む愛知県芸の高木さんこと“ぶうちゃん”や、最初の大葉邸の作業に来てくれた“つばさ”が、平田さんの手足となって働く。 ■ボランティア 9名/天野陽史、高木志瑞子、岡つばさ、杉本小百合、花井佐代子、天野太一、徳本佳英、広谷直子、仲谷陽子 8月12日(木) 前日に引き続きの作業。門の組み立てもだいぶ進み、明日からは設置にかかれそう。それまでに、大葉邸内のメンテナンス作業を細かくおこなう。ペンキ塗り作業の方もかなりすすんで、なんだか大葉邸が生き返ったみたいだ。連日、暑いけれど天候には恵まれている。ペンキが乾くのも早い。思いのほか、作業は早く終わるかも? なんて考えるが、実際そうなったためしはないので、気を抜かずがんばるのだ。今日から太一と入れ替わりで名古屋から船引くんがやってきた。船引……佐久島にぴったりの名前だ。 ■ボランティア 9名/天野陽史、高木志瑞子、岡つばさ、杉本小百合、花井佐代子、徳本佳英、広谷直子、仲谷陽子、船引悠平(名古屋芸術大学) 8月13日(金) 引き続き作業。この日から、平田班の門設置作業がスタート。が、これがなかなかぴったり合わず、合わせてはあちらを削り、もう一度合わせては今度はこちらを削りの細かい作業が一日中続く。一方、大工班は、以前からすでに崩壊しつつある蔵の壁をふさぐ作業にとりかかる。狭い・暗い・暑いの三重苦の中、とにかく壁をふさぐことに専念する。この日、佐久島ボランティアではぶうちゃんと並ぶ古株の尾野くんがやってきた。待っていたよ! ■ボランティア 8名/天野陽史、高木志瑞子、岡つばさ、徳本佳英、広谷直子、仲谷陽子、船引悠平、尾野訓大(名古屋芸術大学) 8月14日(土) 今日もいい天気。そして作業は淡々と続く。大工班は、蔵の補修を完成させ、今度は門周辺のメンテナンスを開始。腐りかけた古い材木に新しい木を添えて強度を増すための作業など、平田さんからやり方の支持を受け、黙々と作業。船引くんは、明日の午後おこなわれる平田さんのワークショップのための材料づくり。午前中、作業が一段落したので昼食の後、海へ遊びに行く。平田さんもボランティアも佐久島に来てはじめての浜辺でのひとときだ。 すっかりはしゃいで水をかけあったりするのはお約束。そのうち、誰から海に飛び込み、あとはそこにいた全員が服のまま泳ぐことに。泳ぐ、というより、写真のように海に漬かって揺られていといったおもむき。しばらく遊んで、着替えた後、午後の作業は続いた。 ■ボランティア 6名/ 天野陽史、高木志瑞子、徳本佳英、仲谷陽子、船引悠平、尾野訓大 8月15日(日) 午前中は作業。今日の作業は半日だけ。午後からは2時間ほど、弁天サロンで平田さんによるワークショップをおこなった。ボランティアたちも平田さんのお手伝いをしつつ、アートなロウソクづくりに参加した。夕方からは、大葉邸もある西地区の盆踊りがはじまる。いったん東地区の大浦海水浴場に集合し、島民、観光客らとともに、手作りちょうちんを持って盆踊り会場への光のパレードに参加する。この日から、平田さんの知人で、九州大学で建築を教えていらっしゃる藤原恵洋さんが教え子4名+ご子息を引き連れてやってくる。みんなで盆踊りにも参加。労働の日々の中にも、佐久島らしい祭り体験をしてもらえてよかった。平田さんも長く佐久島に関わっているのに、盆踊りも太鼓もこの日が初体験。藤原さんチームは3日間滞在の予定。にぎやかになりそうだ。 ■ボランティア 10名/ 天野陽史、高木志瑞子、船引悠平、尾野訓大、藤原恵洋・新川昌明・坂本一浩・馬場尚美・太田一彦(九州大学)、藤原風人(福岡) 8月16日(月) 本日の午前中は、東地区にある筒島で「弁天祭り」がおこなわれるため、ボランティア全員が祭りの手伝いに参加することになった。朝早く食事を済ませ、8時頃東の渡船場に集合。祭りの手伝い班は筒島へ船で渡る。昨日から来ている九州大学の藤原先生のチームも、みんな船に乗り込んだ。 別の船で運んでいた佐久島の大太鼓をみんなで降ろしたり、テントを運んだり組み立てたりで大忙し。ボランティアたちの協力で、順調に作業は進み、午前10時頃から太鼓の打ち込みが始まる。今回のレジデンス期間中に、はじめて佐久島太鼓に出会ったボランティアも少なくなく、みんな大感激。島民のご好意でボランティアたちも太鼓を叩かせてもらう。ぶうちゃん、尾野くん、陽ちゃんなどは、すでに何度も太鼓を経験済みのため、なかなか上手い。とはいえ、島民の迫力の演奏にみんな大感激。 太鼓に聞き入ったり、お参りしたり、おみくじを引いたり、神社の奥の院を散策したりしながら、弁天祭りの楽しいひとときを過ごした。昼食は、祭りのお手伝いをしたお礼に島民からお弁当が差し入れられ、筒島の木陰でアーティスト、ボランティア、島民の楽しいお弁当タイムとなる。 しかし、くつろいでばかりいるわけではありません。午後には再び大葉邸に戻り、藤原先生率いる九大チームは大葉邸の蔵にからみつくツタをはじめとする植物を取り除く作業を開始した。これまで後回しにしてきた作業のひとつ。制作に追われてなかなか手がつけられなかったこの作業は、藤原先生の強力な指導のもと、あっという間に片付いていく。軽トラックで何往復しただろうか? 取り払った植物は浜辺に運んで野焼きをした。長らく暗くじめじめしていた大葉邸の南側部分が明るく風通しも良くなった。藤原先生、そして学生のみんな、本当にありがとう! ■ボランティア 9名/天野陽史、高木志瑞子、尾野訓大、藤原恵洋、新川昌明、坂本一浩、馬場尚美、太田一彦、藤原風人 【関連情報】 ● 2003年度 平田五郎展『佐久島空家計画3/大葉邸 ● 2003年度 平田五郎展『佐久島空家計画3/大葉邸 写真リポート ● 『佐久島空家計画/大葉邸』・今後の室内見学について ● 2003年度 『佐久島空家計画3/大葉邸』・墨すりサポーター募集 ● 2003年度 『佐久島空家計画3/大葉邸』制作リポート1 ● 2003年度 『佐久島空家計画3/大葉邸』制作リポート2 ● 2003年度 平田五郎ワークショップ 『もようのある石こうの板をつくろう 』 写真リポート ● 2002年度 佐久島空家計画2・制作記録 ● 2002年度 『佐久島空家計画2/大葉邸』・写真レポート ● 2001年度 『佐久島空家計画1/大葉邸』・制作記録 ● 2001年度 『佐久島空家計画1/大葉邸』・写真レポート |
白化した漆喰を丁寧に剥がしていく この状態の上に下地をつくります 憎き台風がぶち壊していった蔵の壁 壊れた板壁の補修作業 高所での作業。気をつけて! 門の制作スタート。今年は分業制。 黒壁塗り。島の子供もお手伝い。 初日にしてこの完成度。進歩! 門の部品の塗装をする。 補修のための大工作業もさくさく進む このへんは慎重に、ペンキ塗り。 門の周辺整備。神経を使う作業。 石を削る平田五郎。 つばさ&ぶうちゃん愛知県芸コンビ ここからが大変でした。門の取付け。 すでに崩壊しつつある蔵の穴ふさぎ 作業の指導をする平田五郎。 船引くんはワークショップの準備。 服のまま泳ぐ人たち。 ワークショップで指導する平田さん 手作りちょうちんで島を行進する 藤原チームは祭りのボランティア 若者は腕力で協力 松岡徹と島の老人と交流する平田さん ボランティアたちも祭りのお手伝い 再び大葉邸の蔵。これは南側。 取り払われた植物たち。 |
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■ 2004年度全記録 ■ TO HOME ■主催: 幡豆郡一色町 ■共催: 一色町大字佐久島・島を美しくつくる会 ■企画・制作: 有限会社オフィス・マッチング・モウル |
得意の手作り餃子をつくる平田さん |
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